第206話 12枚目:乱戦結果

 そもそも戦闘が続いていた理由と言うのが、今上げた神々の神官経由で提示された報酬に釣られた召喚者プレイヤーによるゴリ押しだ。エルルはわざわざ死なないように手加減してたのに、自爆とかしてたらしい。

 カバーさんの指示を受けて、別の街へ死に戻りしていた魔物種族召喚者プレイヤー達が街の外の陣地を強襲。「第一候補」の問いかけという名のチクりが効いたのか、思ったより抵抗は無かったそうだ。

 召喚者プレイヤーの無限即時復活(神の奇跡という名のスキルで、デスペナルティも即時解消されていたそうだ)が止まったことにより、戦いの天秤は一気に渡鯨族の方に傾いた。陣地の破壊から状況終了まで、たぶん2時間かかってない。


「ある程度想定しちゃいたが、それ以上に厄介だな。文字通り死を恐れなくて、実際死なない奴って……」


 とはいえエルルをしてこの言い様なのだから、渡鯨族を始めとした被害者一同の人達の疲労と怪我は酷い事になっていたのだが。

 解放された『本の虫』の人達が率先して後片付けに回っているのは、召喚者プレイヤーにも色々居るのだ、という事を印象付ける狙いもあるのだろう。

 ……ま、確かに、支払われるかどうかも定かじゃない報酬に釣られて、理不尽な襲撃するような奴と一緒にされるのは嫌だ。


『というか、このイベント啓示の間にあったあれこれ不愉快な騒動は、ほぼ全部その神々が糸を引いていた訳ですか』


 何でそんな事したかって言うのは……オンラ様の封印解除の結末辺りを参照で。「第一候補」が何を企ゲフン計画していたかという事から今までの人間種族贔屓の様子を材料にすれば、簡単に連想できる事だ。

 ま、今回のことが明るみになれば、少なくともまともな召喚者プレイヤーからは敬遠されるだろうけど。というか、住民からの信仰もガクッと落ち込むだろう。ははは。


『こういうのを因果応報と言うのですよ。ざまぁ!』

「お嬢、口調。……まぁ確かに俺もちょっとすっきりしたけど」


 ちなみに今回被害に遭った渡鯨族の街での被害は、死者数名、治療魔法スキルでも治しきれない(=後遺症が残る)という意味での重傷者数百名、中軽傷者合わせて千名弱と、かなりの人数となった。

 ……普通に暮らしてた一般人も含んでいるからね。ちなみに家屋や施設の被害はまた別だ。

 それに対して「襲撃側の」死者は(召喚者プレイヤーの自爆を除き)ゼロ。重傷者もゼロ。どれだけこっち側が冷静に手加減してたかがよく分かる結果となったよね。


「全く狂信者って言うのは本当に、どの神を信仰しているかに関係なく厄介だな」


 ちなみに、重傷者以上の被害を出したのは住民神官がほとんどとの事。一部路地の角で出合い頭に反射で攻撃してしまったとかいうのも含んでいるけど、その神官たちは、弱い者を狙って襲い掛かっていたところが多数の住民及び召喚者プレイヤーに目撃されている。

 その厄度は、エルルの言葉の通りだろう。これで普段は温厚で説法の上手い、気さくで聞き上手な神官だっていうんだからもう。ボックス様をそれは強く信仰している私が言えた事ではないが、酒同様信仰もほどほどに、理性を蒸発させない程度にしておくのが本来は良い神官ではないだろうか。

 ま、その効き方を考えたら、酒どころか手を出してはいけない薬ぐらいの強度はあるだろうけど。


「え、お嬢達の世界にもあるの、そういうの」

『という事は、こちらにもあるんですか』

「あるぞ。どれだけ元を潰してもすぐに次がどこかで生えてくるからな、その手の組織は」


 ……フリアド世界にも、ダメゼッタイなお薬はあるらしい。召喚者プレイヤーに効くかどうかは分からないが、たぶん今までのことを考えると効くな。強制混乱付与とかそんなんだろうか。

 流石に魂(リアル人格)に影響が出るとかではないと信じたいところだけど。まぁ、流石にそれは無いか。でなきゃ認可が下りないだろうし。

 しかしエルル今さらっと何て言った? 組織が生えてくる? しぶといにも程がある雑草扱いって事?


『まぁ、ひとまず騒ぎ事態は収まって何よりですね』


 しかし結構収まるまでに時間かかったな。外洋に出たら時間的にはギリギリか。……超重量物はちょっとお休みさせてもらって、特殊な餌でないと出てこない魚狙いの図鑑埋めをするか。

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