第213話 恐竜の街へ『破壊の後』


 大破壊の跡地がめちゃくちゃデカいクレーターになっていた……。


 オレたちは、アイが内部の危険を査定し、問題ないと判断したため、いま一度、『ジュラシック・シティ』だった……エリアに入る。


 まだ、ところどころ、シュゥシュゥと煙を上げていたりもする。


 すさまじい惨劇の後というわけだ。




 「これは、凄まじいな……。」


 「はい。マスター。この『K-Pg境界』内に生命反応は感知できません。すべて消滅したと推定します。」


 「そっか……。じゃあ、あそこに見えるのは……。」


 「ええ。いわゆる『魔石』でしょうね。『魔鉱石』とも言われますが、この世界の住民の魔力と魂が結合し、結晶化したものと推測します。」


 「ジン様! 小さいのもいっぱい転がっているゾ!?」


 「ジン様! 中くらいのも何個かあそこに落ちているのだ!」


 「でもー。ジン様ー。あのひときわ大きな魔石がやっぱ目立っているねぇ~。」


 「そうだな……。あの大きな魔石はおそらくは、タイラント・ティラノのものだろうね。」





 「マスター! すべて集めますね?」


 「ああ。何かの役に立つかもしれない。アイ、頼む。」


 「イエス! マスター!」




 こうして、オレたちは焼け跡の中から、魔石集めをしたのだった。


 爺や……。


 カタキは取ったぞ!




 ふと、『K-Pg境界』の境界付近を見ると、ディノエルフ種の『ディノ・ドラグーン』の生き残りが見えた。


 ヘルシングさんたちと戦っていた『十の災い』の者たちだろう。


 空にいた『翼竜種』どもは、どうやらアテナさんたちにすべて駆逐されたらしい。


 コタンコロがそう報告してきていた。




 北の地で、防衛線を張ってくれていたサルガタナスさんたちも、まだ戦闘にはなっていなかったみたいで、『不死国』第五葷はまだこちらへ向かってくる途中だったようだな。


 このまま、第五葷を叩いてしまえば、『ウシュマル』にいるエリザベートの『不死国』第三軍は孤立する。


 そうすると、『ウシュマル』の街へ向かっているククルカンさんの軍や、投槍フクロウさんの『テオティワカン』の軍、レンミンカイネンさんの軍で、三方から包囲戦を展開できる。


 『ウシュマル』の街も取り返せるだろう……。


 ウシュマル・クィーンさんも喜んでくれるといいな。




 「ジン様! ウシュマルの女王様は喜ぶと思うよー。ただ、街がどれだけか被害を受けているだろうけど……。そこは女王様だからね。きっと耐えてくれるよ。」


 「そっか。ヒルコって、なぜかクィーンさんと仲良いよね?」


 「うん。同じ男の娘(こ)だからかなぁー?」


 「ああ。そうなのね……。つか、ヒルコ。やっぱ男の子なのか!?」


 「いや、違うよー。やだな。男の娘(こ)だよ?」


 「お……、おぉ……。」




 「よし! ヘルシングさんの援護に行くぞ!」


 「イエス! マスター!」


 「行くであるゾ!」


 「行くのだ!」


 「僕も行くよー!」


 (我もアテナ様と一緒にそちらへ向かいます!)


 おお……! コタンコロも合流だな!




 「んん……? あれ? 一人、足りなくないか?」


 「え……? 誰でしょう?」


 「あ! デモ子だ! あいつ、どこ行った?」




 あ、いたいた。


 何やってるんだ? あいつ……。


 見ると、デモ子は何かの肉に食らいついてムシャムシャ食べていたのだ。




 「おい! おまえ……。何、食ってるんだよ?」


 「あ……! ああ、ジン様! いや、焼け残ったディノエルフ種の死体がこんがり焼き恐竜って感じで美味しそうだったもんで……。つい……。」


 「あきれた食いしん坊だな……。」


 「これ、なかなかイケますよ?」


 「うーん……。恐竜の丸焼きか……。昔、何かのアニメで見たな……。」


 「デモ子! まだ戦いは終わってませんよ!? それは、後にしなさい!」


 「うへぇ……。わっかりましたよ。じゃ、『異界の穴』に収納しておきますよ。」


 「へえ? そんなことできるんだね?」


 「ええ。まあ。それが取り柄ですからね……。」




 デモ子が恐竜の丸焼きを何体か、『異界の穴』に収納したところで、オレたちはヘルシングさんの元へ向かった。


 もちろん、デモ子の『異界の穴』で、一瞬でね……。


 トンネルを抜けるとそこは……。






 ヘルシングさんたちの目の前に現れたオレたち。


 「ヘルシングさん! 無事でしたか!?」


 「ジン殿か!? いやぁ……。むしろ、ジン殿の超魔法こそ、むしろ巻き込まれたら危うかったぞ!?」


 「あはは……。事前にお知らせしてよかったですね……。」


 「そうだな。よくぞ知らせてくれた。アイ殿の上級伝心呪文『聞け聞けひばり』で教えてもらったからな。」


 「……!? 『聞け聞けひばり』……ですか?」


 「ああ。あれはレベル6の伝心呪文『聞け聞けひばり』だろ?」


 「そ……、そうでした! そうでした! はは……。アイ、よくやった。」


 「まあ!? マスター! くふぅ!!」


 アイが喜びに悶えている。




 「ところで、ヘルシングさん。あいつら……、どうしますか? 戦意を失っているようなら降伏を呼びかけますか……?」


 「ああ。だが、あの様子じゃあ、戦いになるまい……。」


 そう言ってヘルシングさんが指差した方向には、『ディノ・ドラグーン』の残党、『十の災い』の軍がその進撃を再開しようとしていたのだ。


 事態の収拾がついていないのか、それとも単なる命知らずなのか……。




 「ふははは! あの口やかましい『賢種』のじじいどもめ。全員くたばりやがったわ!」


 「ティラノ帝も情けない……。吾輩らは自由というわけだな!?」


 「俺様が新たな皇帝になってやろうではないか!?」


 「いやいや! 皇帝は我、シアッツであろう? 『十の災い』の中で『暗闇で覆う』を象徴する我こそがこの世を統べるにふさわしい……。」


 「シアッツ! 貴様! 抜け駆けは許さんぞ!?」


 「いや、アロサウルス! 貴様こそ!?」


 「おのれ! 俺様こそ『疫病を流行らせる』を象徴するゆえ、この世を災厄に包んで見せるわ!」


 「なにを!?」


 「なんだと!?」




 しかし、その『ディノ・ドラグーン』たちは、指揮系統が乱れ、混乱していた。


 今までは暴君ティラノが押さえつけていたのだが、もともと協調性もなければ統率もない種族であった。


 みながその野望を噴出させ、軍は乱れに乱れまくっていたのだ。


 とうてい、戦いを続けられる状況ではない。




 「しかし……、あんな凶暴なヤツラを野放しにしておくわけに行くまい! 残党狩りだ!」


 「そうですね。ジンさん。敵を殲滅せし時は……徹底的に……ですよ!?」


 「そうね。ジョナサンの言う通りね。吸血鬼に身を堕としたヤツラを救うには……、殺すしかないわ!」


 「ジン殿はやはりお優しいですな。『魔神の目にも涙』……とまでは言いませぬが、さきほどあれほどの大虐殺を行った者と同じ人物とは思えませんなぁ……。後始末は私どもにお任せあれ!」


 「ふむ……。ファット・フルムス公の申すとおりじゃ。わしらにまかせて休んでおれ……。」


 「まあ、吾輩らで十分よ!」


 「ぼ……僕はジン様にも参加してもらいたい……ですけど……。」


 『ヴァンパイア・ハンターズ』のみなさんは、吸血鬼はこの世から一匹たりとて残さない決意をしているようだ。




 「わかりました。オレたちは後方支援に回ります。ヘルシングさん! みなさん! お気をつけて!」


 「「おう!! 」」




 こうして、『ジュラシック・シティ』の街の残党軍と、最後の戦いが行われたのだった-。


 ヘルシングさんたちの鬼神か魔王かってくらいの戦いっぷりが恐ろしいほど強烈であったのは言うまでもあるまい……。





~続く~


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