恩に着せた
「お客さん、馬車内でそういう事されるとすごく迷惑なんで二度としないでください!」
「「ごめんなさい」」
ウサギさんに怒られちゃった。てへぺろ。
すっかり日が暮れているので今日はこの村で一泊するみたいです。
ウサギさんによくよく話を聞いてみるとディファス国まであと数週間は各地の村や小さな街に泊まったり野宿したりして向かうようでした。
ちなみに食事は別料金で売ってくれるみたいです。野宿する時は狭い馬車内で寝るか別料金でテントも借りられるようです。商魂たくましいですね。
私にはストレージもありますし、錬金スキルで家も建てられますので野宿する事は無いでしょう。
出発は明日の朝、遅れたら迷惑料を追加で払わせるとの事なので寝坊しないようにしましょう。
「ロトルルは泊まる所決まってるの?」
「これから探そうかと」
「実は私もなんだよね」
む、これはひょっとしてサービスシーンの前振りでしょうか?
「……そういう事ですか」
「どういう事?」
「えっちな事……」
「全然違うにゃ!!」
「ですよねぇ、あはは……」
今日出会ったばかりの人に何を口走っているんでしょうかねぇ、私ってば。
「お金が無いって言ったでしょ? だから一緒の宿の部屋に泊まれば安上がりで良いかなと思ったんだけど、ロトルルは見た目はか弱そうな女の子なのに中身はケダモノだからやっぱりやめておこうかにゃ……」
「えっちでごめんなさい……」
「あはは、ちょっとだけ冗談。……でもそういう事をするのなら、もっとお互いを知ってからが良いかなって思うんだ」
「……ミャーさん」
「とは言っても私はカッコいい男が好きなのでロトルルとそういう関係には絶対にならないから勘違いしないように!」
「ミャーさん……」
最初の「……ミャーさん」は憧れと尊敬を含んだ感じで、最後の「ミャーさん……」は涙声で言いました。
安いから馬小屋に泊まろうとするミャーさんを引き連れて夕食付きの宿屋に泊まる事にしました。
「お金が……」
「体で払って頂ければ全額負担しますよ」
「言い方っ! 誰かに聞かれたら困るにゃ!」
冗談はさておき、宿屋の店主に二人部屋をお願いして宿代は全額私が払ってあげました。
「本当に良いの?」
「お金ならたくさん持ってますので」
「……そういう事は他人に言わない方がいいよ?」
「ミャーさんだから言いました。ミャーさんだから言いました!」
「う、うん。なんだかよく分からないけど気持ちは伝わったよ。ありがとうね」
大事な事を二回言うと相手もちゃんと分かってくれます。皆さんも大事な事を言う時は二回続けて言ってみてくださいね。
案内された部屋はこぢんまりとした質素な部屋でした。
まぁ、村の宿屋なんてこんなものでしょう。
むしろ村に宿屋がある事を感謝しないといけませんね。
「ふぅ、一休み一休み」
「ミャーさん、靴のままベッドに上がったら汚いですよ?」
「へ? みんな靴のまま寝てると思うけど……?」
「おぅ……異文化ギャップ……」
前世はもちろん今世でも土足でベッドに寝る事なんてありませんでしたから異文化交流って楽しいよね!
……正直なところベッドに靴履いたまま寝るとか無いです無理です汚い汚い汚い。
文化とは染み付いた生活習慣なので、私が何か言うと争い事の火種にしかならないと思うので何も言いませんよ。
「すごく嫌そうな顔だね……」
「ぐぎぎぎ、何も言いません。何も言いませんから!」
「う、うん。今日は靴を脱いで寝てみようかな?」
「それが良いと思います!」
「あはは……」
汚れたベッドを清掃魔法のクリーンで清潔にすると万物魔法スキルのレベルが2に上がり、中級魔法をいくつか使えるようになりました。
「ロトルルって魔法も使えるんだ」
「ええ、まぁ」
「良いなぁ、私も魔法を使えたらもう少し楽に稼げると思うんだよね」
「ですね」
「攻撃魔法か状態異常魔法が欲しいんだけど、マジックアイテムを買うお金も無いし世の中世知辛いにゃ」
「あははは」
ごめんなさいミャーさん! 厄介ごとには極力巻き込まれたくないのでスキル合成の話とか出来ませんすみません!
ミャーさんと一緒に宿屋の食堂で晩御飯を食べましたが、あまり美味しくは無く、量も少なめだったので部屋に戻ってストレージから果物を取り出しミャーさんと分け合いました。
「マジックバッグならぬマジックポケットかにゃ? 羨ましいにゃあ……」
「えへへ」
輪切りにしたメロンをエアロアダマンタイト製のお皿に載せて、これまた同じくエアロアダマンタイト製のスプーンで食べながら、瞳孔が開いて黒目が大きくなったミャーさんが先ほどから私のお腹ポケットを凝視してきます。ちょっと怖いけど可愛いですね。
お腹がいっぱいになったところで雑談もほどほどにして就寝。
「グゴゴゴゴグガガガガ!」
「んひっ!? 何の音!?」
急に道路工事が始まったのかという騒音が鳴り響き、ビックリして飛び起きてしまいました。
「グガガガガ! すぴー、フゴゴゴゴ!」
「い、イビキ?」
寝顔がとってもキュートなミャーさんから発せられているとは到底思えないほどの物凄いイビキで、もしかしたら何か病気に罹ってるのでは? と思うほどでした。
「鑑定……スキルレベル20だとどんな病気か分からないのか」
ストレージから鑑定指輪を取り出して装備し、再度ミャーさんを鑑定してみました。
「睡眠時無呼吸症候群、アレルギー性鼻炎、脳卒中……脳卒中!?」
慌てて万病治癒ポーションを取り出し、寝ているミャーさんにぶっかけます。
「冷たっ!? 何にゃ!? 何事にゃ!?」
「早く気付けて良かったぁ……」
「どゆこと?」
混乱しているミャーさんに説明すると青ざめた表情をして驚いていました。
「つまり死に掛けてたって事?」
「そうですね……」
「ひえぇ……助けてくれて本当にありがとにゃ!」
「いえいえ、御礼は添い寝で良いですよ。ベッドも濡れちゃいましたしね」
「え、それは魔法で」
「ベッドを乾かす魔法はこの世に存在しませんよ?」
「いや、清掃魔法」
「御礼は添い寝です」
「わ、分かったにゃ……目が怖いにゃ」
私の寝ていたベッドに移動してミャーさんと添い寝しました。
もちろん命を救った対価はきっちりいただきますよ。
「鼻息荒いにゃ」
「スーハー、スーハー、ミャーさんしゅき、だいしゅき、スーハー、スーハー」
「うぅ、これじゃ眠れないにゃ……」
「ウヘヘ、ミャーさんの胸柔らかい」
「はぁ……もう気が済むまで好きにしていいにゃ……」
「えへへ、ちゅーして良いですか? ちゅー」
「やめるにゃあー!!」
こうして、夜が明けるまでミャーさんの体を思う存分楽しむロトルルなのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます