ロリコンさんとトイレで……した。

 リュックに荷物を詰め込むとお姉さんに引っ越す事がバレそうなので一旦市場に向かいます。

 マジックバッグを購入してアイテムボックスかストレージ、あるいはインベントリのスキルを入手してからこっそりと引っ越しします。

 お金が掛かりそうなので、まずは薬師ギルドにハイポーション50本を持って行きましょう。



「ああっ! ロトルルちゃん! 最近見かけないから心配してたよ!」

「今日はハイポーション50本の買取をお願いします」

「50本!?」


 カウンターにハイポーションをじゃらじゃらと並べます。

 ポーション瓶は細長い試験管の様な形なので、落とさないように手で支えます。


「こんな大量に……全部本物だわ……ロトルルちゃん、あなたって……?」

「今日はいくらですか?」

「え、えーっと、500万エルです、けど」

「カードに」

「……はい」


 有無を言わせない態度で接すれば根掘り葉掘り聞かれずに済みます。

 資金も手に入れたのでマジックバッグを買いに市場へ!


「レベル3、こっちは5、これはストレージ……高い。インベントリは、無いか……」


 鑑定サングラスでバッグの能力を吟味。

 ストレージ能力のマジックバッグは200万エルするので、私がここで購入してしまうと目立ち過ぎるので、一旦冒険者ギルドへ。


「お、ロトルルちゃん。空中庭園はどうだったよ?」

「楽しかったですよ。今日はシシドウさん居ますか?」

「そろそろ戻って来ると思うわ。こっち来て話を聞かせてよ」


 冒険者ギルドの酒場でいつものお兄さん達とお姉さん達が楽しそうに食事を取っていました。

 シシドウさんが戻るまで会話を楽しみましょう。


「ほら、ここに座りな」


 微妙に露出度の高い軽装備を身に着けたお姉さんがポンポンと空いている席を叩いたのでそこに座ります。


「何か食べる? これとか美味しいわよ?」

「それは僕のだよ! まぁ、良いけどさ」

「遠慮無くいただきますね」


 この甘辛煮の骨つき肉うまうまです。モグモグモグ。


「で、どうだった?」

「むぐ、空を飛べました」

「飛んだか! はっはっはっ、あれは良いもんだ」

「ステキな男性とか出会ったりしなかった?」

「男性に興味ありませんので」

「え、っと、そうね。その歳だとそうよね。あなた大人びた雰囲気があるから、そういう話もいけるかと思ったわ」

「女性が好きなだけです。そういう話もいけます」

「そ、そうなの……?」

「お姉さんとか、大人しそうな感じで好みです」

「わ、わたしですか!?」


 全体的に白っぽい衣装を着ているどうみても清楚系ヒーラーのお姉さんは前世からの好みです。


「ほほう。ねぇ、私はどうかな?」

「良いですね。でも、化粧は薄い方が好みです」

「ブフッ! あだっ!? 何をする!?」


 斥候職が似合いそうな優男、普段はイジられキャラだと思われる黒髪のお兄さんの頭を露出気味のお姉さんが殴りました。


「アンタが笑うからよ!」

「オマエは手が早すぎるんだよ!」

「何よ!?」

「何だよ!?」

「痴話喧嘩なら他所でやれよな」

「「はぁっ!?」」

「いつも息ピッタリね」


 ワイワイガヤガヤと楽しく会話をしているとシシドウさんが戻って来ました。


「みんな楽しそうだな。僕も混ぜてくれよ」

「おう、シシドウ。今、お嬢ちゃんが……って、お前、その腕……」

「シシドウ……あんた、ヘマしたわね」


 私は振り返ってシシドウさんの方を見ると、右腕の袖がひらひらとしているのが目に入りました。


「ちょっとドラゴンに食べられちゃってね。なに、腕の良い回復スキル持ちに傷口は塞いで貰ったから問題無いさ」


「シシドウさん……」


 シリアス雰囲気ですね。こういう空気は私にとって喜劇にしかなりませんよ。


「てってれー、メガポーション」


 リュックからメガポーションを取り出してシシドウさんに渡します。


「メガ? 何だって?」

「良いから飲んでみてください」

「う、うん」


 ゴクッと一飲みすればあら不思議、無くなった腕がニョキニョキと生えて来ましたよ。


「これ!? 何で君が!?」

「お嬢ちゃん、何者だ?」

「ナイショです。それにタダで、という事もありませんから」


 シシドウさんを鑑定スキルで調べます。

 剣術スキルレベル37、火炎スキルレベル33、浮遊スキルレベル5、ヒーロースキル。ヒーロースキルって何でしょう? まぁ私には必要ありませんけど。

 剣術と火炎は貰っておきましょう。


「シシドウさん、ちょっとトイレまで一緒に来てください」

「え? い、いいけど?」


 みなさんが唖然とする中、シシドウさんと一緒にトイレに入りました。


「あの、何をするのかな?」

「ちょっと小指を貰うだけです」

「小指?」


 シシドウさんの右手の小指をポーション作成スキルでシシドウポーションにします。


「ひぐぅううう!?」


 私が握ったシシドウさんの小指がシシドウポーションになった所でメガポーションをぶっ掛けてすぐに治しました。


「ど、どういう事!?」

「代償です。そういうものだと思ってください」

「代償……。よく分からないが、とにかく助かったよ。ありがとう」

「あと、欲しいマジックバッグがあるので、このあと一緒に買いに行きましょう」

「あまり高くなければ……ドラゴン討伐の違約金が、ね」

「大丈夫です。カードを出してください」

「カード? はい」


 シシドウさんのカードに私のカードからお金を移します。

 カードとカードの間を立体映像のような金貨が滝の様に流れ出てます。


「200万エル移しましたので、それで私の欲しいバッグを買ってください」

「君が何者かは聞かないでおくよ」

「シシドウさんは、私の見込み通りのロリコン仲間でしたね」

「……僕はロリコンじゃない。って仲間!? キミもなのかい!?」

「ボロが出てますよ。パンツをチラッっと」

「おぉ……。って違う! 僕はロリコンじゃないんだああああ!!」


 トイレから出てくるとシシドウさんが針のむしろになっていました。


「……僕はロリコンじゃ、無いんです……」

「皆さん。シシドウさんみたくなりたく無ければここで起きた事はご内密に」


 それではマジックバッグを買いに行くとしますか。


「毎度ありがとうございました!」


 店員さんウキウキでしたね。


「はい、これで良いんだよね」

「ありがとうございます。助かりました」

「いや、こちらこそ本当にありがとう。あのまま引退は生き地獄だったからね」


 これでストレージスキルが手に入ります。

 それにシシドウポーションで剣術と火炎が手に入りました。ラッキー。

 シシドウさんとはその場で別れて、路地裏に入り転移で自宅に戻りました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る