第37話

――さとし。


――ミキ。


――さとし。


――ミキ。


例のやつが始まった。


恒例と言うかもうおお約束事みたいなものだ。


そしてこの日は、いつもよりも長い時間、それが続いたのだ。



次の日の朝、いつもの日課でミキにおはよう、と語りかけると、驚いたことにミキからおはよう、と返ってきたのだ。


――どうしたの? 返事をくれるなんて思っていなかったから、びっくりした。


――わたしも死んでから時間が経ってきたので、この世の環境にだんだん慣れてきたのよ。だから活動しても前ほどは疲れなくなってきたわ。だから活動時間が増えて、朝も返事が背着るようになったのよ。最近になってようやく疲れないコツもつかんできたし。


――そうなんだ。それは嬉しいね。これからは毎朝しゃべれるんだ。ミキと。


――うん、わたしも嬉しい。


――そうだ、もう行かないと。それじゃあ行ってくるね。


――行ってらっしゃい、まさと。早く帰ってきてね。


――うん、できるだけ早く帰ってくるよ。


――わたし待っているから。


――待っててね。


――うん。


そのまま大学に行った。


午後の講義が終わり帰ろうとすると、河本に声をかけられた。


「よお、今から遊びに行かないか。明日は休みだし」

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