第33話
それにしてもミキにこいつの相手をしていてくれと言われたが、こんなやつの相手はいったいなにをどうすればいいのか。
まるでわからない。
日本語がちゃんと通じるかどうかもあやしいのに。
考えていると、そいつが言った。
――おい、ほんとにおまえは、俺のミキに手を出しやがって。
――俺のミキって、おまえらつきあっていないだろうが。
――うるせえ! ミキは奥ゆかしいんだ。俺からの告白を今か今かと待っているんだ。
――それで何度も告白して、何度もふられた。それは告白を待っているとは言わないだろう。
――うるせえ! ミキはシャイなんだ。照れているだけなんだ。俺にはミキの気持ちが手に取るようにわかる。ミキは俺が大好きなんだ。愛しているんだ。
やっぱりストーカーには日本語が通じない。
時間の無駄と言う言葉があるが、こいつとの会話は本当に無駄だと思った。
俺はこいつとのコミュニケーションを放棄したのだが、こいつは一歩的にしゃべってきた。
その都度俺は独り言を言った。
――おい、しかとすんなよ。
――ミキはいったい、どこに行ったんだろうか。
――ふん、俺に対して返事を返さないということは、俺が正しいと認めたわけだな。
返事を返さない、イコール言い負かしたという思考は、バカ特有の考え方なんだがと俺は思った。
――ミキはいつ帰ってくるんだろうか?
――ミキが帰ってきたら、今度こそ二人で幸せな新世界を築くんだ。おまえなんかに邪魔はさせないからな。
――そういや、腹がへったな。今日の晩ご飯はなににしようか。ミキはなにが好みなんだろうか。とは言っても、ミキはなにも食べないけど。
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