第7章 第21話
「はぁ…ほんとにびっくりしたよ。」
ひとまず解散となった後。ログアウトするでもなく少しボーっと周りを見ていると、ドリッピーが声をかけてくる。
SeregranceはまだErsterSpielerと話し込んでいるようだ。
『申しわけないなぁ…って俺が謝る必要があるのか疑問なくらい、俺に選択肢は無かったんだけどな!』
「あのセレさんの割り切りっぷり見てるとそうなんだろうねー。
ところで結婚指輪は何にしたの?」
『よく分からん。教会でトレードで渡されてそのままだよ。』
「じゃぁ指輪の名前教えてー。」
メニューを開き指輪の名前を確認する。
『えーっと…イザナギの指輪だな。』
「げっ…さすがエアスタさん…」
『良い物なの?』
「良いも何も、結婚指輪で最高クラスのレアアイテムだよ。」
『やっぱりそうなのか。』
「結婚するとね、夫婦で共有のアイテムボックスが使えるようになるんだけど、指輪の種類でアイテムボックスの性能が変わるんだよね。
お店で売ってるのはシルバー、ゴールド、プラチナの3種類で、シルバー同士、ゴールド同士って感じで、セットになってる物をお互いに装備することで効果を発揮するの。
プラチナ以上のものはモンスターから手に入れるしかなくなるんだけどさ。
ゼウスとヘラとか、ハーデスとペルセポネとか、夫婦神の名前を冠した指輪はすごいレアで共有アイテムボックスもかなり便利な効果が付くの。
スピさんがイザナギってことは、エアスタさんは多分イザナミかなー。」
『へー。ちなみにどんな効果?』
「夫婦神シリーズは、共有アイテムボックスに装備品を入れる事が出来て、さらに共有のまま装備できるようになる。
普通は消耗品しか入れられないんだからね?」
『でも、入れておいた物を持ち逃げされたりする可能性があるんじゃ?』
「持ち逃げする可能性がある人と、そんな恐ろしい高級品使ってまで結婚しないでしょ…」
『…この指輪そんなに高いのか。』
「まー、でもそんな高級品渡してまで結婚するってくらいなんだから、エアスタさんってば本当にスピさんと結婚したいと思ったんだなぁ。」
『俺がまだピンと来てないけどな。』
「それはそのうちで良いんじゃない?セレさんに愛想付かされない程度にね!
それじゃボクは落ちるから、2人と仲良くね!」
『あぁ。待ち合わせはまた来週な。』
「はいなー!」
軽快な返事を残してドリッピーの姿が消えた。
それを見届けてから、2人の元に歩み寄る。
『盛り上がってるところに悪いんだけどさ。』
「どうしたの?」
『この1週間で家の改修終わらせたくてさ。まだ連絡付けられる時間だから先にログアウトしてていいかな。』
「えーっ、フィーアトさんあたしを置いて行っちゃうの?」
上目遣いにErsterSpielerがこちらを見る。
「なーんて、冗談だよ。
強制ログインされない部屋作るっていう計画だろ?行ってらっしゃい。
その代わり、セレさんをしばらく借りてて良いかな?」
「スピ。電話とPC使うだけならベッドの上でね。
強制ログインで戻ってきたら、私が片づけてあげるから。行ってらっしゃい。」
『あ、あぁ。いつも悪いね。』
自分からログアウトを申し出たはずなのに、若干の仲間外れ気分を感じてしまう。
そしてそのままログアウト。
セレをエアスタさんに盗られて、エアスタさんをセレに盗られた感じなのか。
自分のことながら良くわからない心境だ。
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