第2章 第16話

このゲームの攻略法として、メインの武器を鍛え上げ、

その武器の種類にあった技術熟練度を上げて戦い、

さらに状況に応じてサブ武器が2つくらいあると良い、とされている。


だが、対人戦を見ていて強く感じるのは、武器ごとの相性があるということだ。

相手のメイン武器に対して、常に有利を取れる武器で戦えると

それだけで勝率は上がるのではないだろうか。


本当は、戦闘中の状況にも応じて武器を切り替えられると良いのだろうけど、

戦闘中に武器を切り替えると、5秒ほど身動きができなくなってしまうペナルティがある。

よほどの状況じゃない限り難しいだろう。


とは言え、まんべんなく武器を使っていくというスタイルを目指していく中、

両手装備時限定のスキルだと効果も半減してしまう。

やはり使う場面を問わない発火能力の方が優先度は高いだろう。

よし、決めた。発火能力だ。



「本当にこの固有スキルで良いですか?」


今回は熟慮に熟慮を重ねた上での選択だ。

1つ気になるのは、ここでスキルを手に入れてしまうことで

初心者エリアを追放されてしまわないかということだが…

こればっかりは既にイベントが始まっている以上しょうがない。


そもそも、このエリアに転送された時から武器を持っていない。

メニューを出してみるものの [武器]メニューが半透明になっていて選べない。

死んでリセットという手は通用しないみたいだ。

であれば、後は進んでみるしかない。

[はい] を選択する。


「おめでとうございます!2つめの固有スキルを手に入れました!

 この固有スキルを使ってDance with The Weaponの世界をさらに楽しんで下さいね」


**********


景色が遠のき、気が付くと蘇生ポータルに居た。

辺りを見回す。見慣れた景色だが、果たして初心者エリアなんだろうか。


街中の様子も、いつも通りの見慣れたもの。

ひとまず即追放ということは無かったらしい。


小夜香に色々話したい事があるが、まずは今後のスキル選別がどうなるのか

確認がとれてからにしよう。


すぐにダンジョンに向かう。

ダンジョンに入ってしまえば誰かに見られることも無いので、

早速手に入れたばかりの発火能力を使ってみる。


スキルには勝手に発動するスキルと、自分で発動させるスキルの2種類があり、

発火能力は自分で発動させるスキルになる。

メニューから[ステータス]を選び、さらに[スキル]を選択する。

2つ表示されているスキルスロットの2つめに ★★★ 発火能力 があるので選択する。

後は、発生させたい場所を見てイメージするだけで発動するということだが…


自分の武器に火をおこしたいとイメージしたら、ちゃんと火を纏った。

ついでに明かりを灯そうと、自分の頭上をイメージするとそこにも火が起きた。

思ったより簡単だ。

この先進むルート上に火を並べてみようと思ったが、

どんなに鮮明に思い浮かべられても、目に見える範囲でしか火は起こせないらしい。


調子に乗ってそこら中に火をばらまいていたら、自分の武器の火が消えた。

どうやら6個目の火を起こすと、1個目が消えるらしい。

消せるか試してみたが、消したい火をイメージするだけで消すことができた。

明かりが届く範囲も中々広い。


初心者ダンジョンこそ、通路に松明が並べてあるが、

この先のエリアでは真っ暗なダンジョンも多いと聞くので、それだけでも重宝しそうだ。


ボスには、武器に火を纏わせて攻撃してみたが、

足を殴って弱点を一撃という流れは変わらなかった。

スキル一覧が表示される時はさすがに緊張したが、それも杞憂に終わる。


いつもの通り蘇生ポータルで復帰し、1勝10001敗の戦績。

2つめのスキルスロットを手に入れた事によるスキル選別への影響は無かったらしい。

満を持して小夜香に連絡をした。



『ということで、発火能力を手に入れました。』

「…色々と凄いわね。

 ゲームにそんな仕掛けをする方もする方だけど、

 まさか手に入れる人がいるとは思わないでしょうね。」

『少なくとも手に入れている人はいないんじゃないかな。

 始まって2年半くらい経つゲームだけど、

 攻略サイトやユーザのコミュニティを見る限り、

 1万敗もしてる人はいないと思っていいだろうね。

 むしろ、変人扱いでたまに俺の名前を見かけるくらいだよ。』

「じゃぁ、あなたはダンスの世界で唯一、

 固有スキルを2つ持ったプレイヤーということになるわね。」

『…厳密にはまだ1つだけだけどね。

 いずれ★★★★★と★★★の2つのスキルを持ったプレイヤーになる予定ではあるよ。』

「私もそれにふさわしいパートナーにならないとね。」

『これだけ理解してくれて惜しみない協力をくれるだけで、十二分のパートナーだよ。』

「ありがと。

 でもSeregranceが想像以上に活躍できそうで嬉しいわ。」

『どういうこと?』

「ふふっ、内緒。」

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