第69話
「え、あの、ドラゴン討伐したのは旅行先だって書いてあったんですけど……」
しっかり記事を読み込んでいたようだ。リゼは友人だからそれもそうか。
「あー、まあ、広いところで魔法の練習がしたいって事で付き合ってた。」
流石に極秘の任務であった為本当は先生から行けって言われたとは言えず、適当なウソではぐらかした。
「それだけの為に王都を出てまで行ったんですか?」
「ああ、まあ旅行も兼ねてだけど。リゼの奢りって聞いたら行かない手がないだろ」
「良いなぁ、私も行きたかったです」
「良いところだったぞ。また今度行こうか?」
「え、良いんですか!?」
おっと、今度は急に元気になったぞ。カレンはやっぱり笑っていた方がいいな。普段一人で無表情な事が多いから。
「ああ、そうだな、皆も誘って行こう」
「あ……そうですね、行きましょう」
え、またテンションが急降下したぞ。情緒不安定気味で心配になる。大丈夫か?
「えっと、そろそろ行かないといけないのでこれで。お待ちしてます」
「おう、また後で」
とててっ、と雑踏の中に消えていくカレン。
「さて、と……」
あの店はどこだろうな、ここすぐに店の並び変わるからな……と思いつつ市場をぶらぶら歩きながら考える。
どうやらドラゴンの件はやはりリゼが倒したと言う事で扱われているらしい。カレンも知っているということは結構な数の人間が知っているだろう。今朝新聞部も言ってたしな、学院でも騒ぎになるだろう。
はぁー……。容姿端麗、成績優秀、大貴族の御令嬢、魔法も既に一線級、そして今回のドラゴン討伐という英雄クラスの実績。絶対リゼが色々と持ち上げられて変な扱いされるのは間違い無いし、その名も国中に広まることだろう。
そうなると現在フリとはいえリゼと付き合ってる設定を周囲に知らしめていた俺はどうなる?マジで殺さねかねん。最悪国に。なんか王子が娶るとかそういう目的の為に。まぁ可能性は低いだろうが万が一があり得るのが怖い。そう、怖い。人間怖い。リゼみたいに相手の思考が読めるわけでもないし、何してくるかわかんねえから。
周りが俺達の関係に飽きてくれたら今の恋人ごっこを解消しようと思っていたのだがこれはもう飽きられるのは無理だろう。俺の保身の為に可及的速やかにリゼと別れる必要がありそうだ。
確か王子が今学院に居るんだっけか。今の国王には王子と姫が一人づつ居て、二人で王位を巡って競い合っているとの噂だ。とは言っても平和が長く続くこの国では分権化が進み国王に権力が集中しているわけではない為、別に血で血を洗うような権力闘争が行われているわけでもなく、兄弟喧嘩のような微笑ましいものらしい。
まぁそんな王子が王位を得る為にリゼを娶る可能性も大いにあるわけで……。
うん、普段俺はリゼと釣り合わないと思っているし、リゼの為にも俺は手を引いた方がいいと考えてはいるがいざこうしてリゼが他の誰かに取られると思うと辛いな。
……取られる?何を言っているんだ俺は、取られるも何もリゼは俺の物ではない。リゼはリゼ個人だ。リゼが誰とくっつこうが、それはリゼの自由だし、権利なんじゃないか。
そうだな、こうしよう。今俺が思っている事は全て俺の想像だ。もし仮に王子がリゼにアプローチをかけたとして……、それで、リゼが家の事とかも全部考慮した上で誰を選ぶのか、は彼女が決める事だ。任せよう。
大した自惚だなヘイン。まるで、自分が選ばれるとでも思っているような口振りじゃないか。自分を選んで欲しい、そう思っている事の裏返しなんじゃないか?
ああ、そうだな、メリルにも言われた通り、俺はリゼの事が好きなんだろうな。
嬉しかったもんな、リゼが久しぶりに話しかけて来た時。多分ずっとどこかで彼女の事を思っていたんだろう。だからこそ、彼女が首席だって知っていたのかもしれない。
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