小鹿

ぷるぷる足が震えたよ

立とう立とうと頑張った

だって、立たなきゃ死んじゃうし

なにより、なにより愛されない

そしたら置いていかれるし

とても不安になるからね

あと少し、あと少し

とて、とて、とて

やっと歩けて母の乳を吸う

途端に、みんなが逃げていく

危険だ逃げろと叫んでる

ちらりと見たのは早くて目が怖いもの

母さんは、

僕を置いて行った

遠くで父さんが「また産めばいい」

この怖いのは、母さんと父さんとの別れ

悲しくない

だって生まれたばかりだもの

走る、走る、背の後ろ

怖いのは最後まで怖い目で

僕の喉を噛みちぎる

あ、と言う前に僕は意識を手放した

でもなんでだろう

怖いのは怖いまま悲しそうな目を

していたような

僕は小鹿

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