第24話
「秋帆殿、幕府と尾張家の砲術は任せましたぞ」
「お任せください、左中将様。
罪を受け幽閉されていた私を解放し、新規召し抱えてくださった御恩、決して忘れるものではございません。」
「だた、秋帆殿には、正規部隊の正面戦術を任せたいと思っている。
暗殺や奇襲を行う者は、別の者に任せたい。
その事は理解しておいてくれ」
「承りました。
私は一介の砲術指南でしかございません。
戦略戦術は左中将様に遥かに及ばない事、重々承知しております」
将軍家と幕閣に十分な信頼を得た徳川慶恕は、武蔵国岡部藩に幽閉されていた、高島秋帆を解放した。
長崎会所の会所経理が杜撰であった事、高島秋帆が脇荷貿易で十万石大名並みの利益(四千両)を得ていたこ事は、間違いのない事だった。
海外との貿易を徳川松平一門で独占したい徳川慶恕には、見過ごせない事だった。
だから徳川慶恕は高島秋帆を無罪とはしなかった。
有罪だが刑期を終えたことにして解放した。
その上で尾張家砲術指南役に任命した。
しかも幕府の鉄砲百人組、持筒頭、先手鉄砲組に合同訓練を命じた。
それぞれの与力同心は、尾張家の新規召し抱え基準が高島流砲術となったことで、進んで合同訓練に参加した。
同時に四百もの流派があった砲術の師範と、実際に熊などを狩っているマタギ(猟師)を集めて、日本独特の砲術を編み出せないか試行錯誤していた。
特に暗殺と不正規戦に特化した砲術を編み出したいと思っていた。
命中と速射に重点を置いて編み出された日本の砲術は、命中精度より集団運用を重視した面制圧射撃の高島流砲術とは、全く性格が違っていた。
南蛮が攻め込んできた場合には、昼間の正面戦は高島流砲術で戦い、夜間の奇襲を新たに編み出した尾張流砲術で戦うつもりだった。
だがそれもこれも、実戦的な尾張流砲術が完成しての話だった。
さらに、高島秋帆を中心に、幕府領と尾張派領内で反射炉を作り、全長五九・五センチ、口径二〇センチ、重量二七〇キロの青銅製モルチール砲を量産する。
同時に全長九六センチ、口径八・六五センチ、重量一〇〇キロの青銅砲と、全長一九一センチ、口径十二・一センチ、重量六二六キロの青銅砲を研究する。
全てはオランダとオロシャからの情報で、南蛮国で開発中の大砲だった。
「高島秋帆の弟子」
下曽根信敦:旗本・高島門下の三龍
江川英龍 :旗本・韮山代官・高島門下の三龍
村上範致 :三河田原藩・高島門下の三龍
有坂成章 :長州支藩岩国藩
池辺啓太 :肥後藩
平山醇左衛門:佐賀藩武雄家
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