第19話:便利なスキル
俺がステータス画面を見せると、リリアーナは口を開けたまま固まってしまった。
「……あのー、リリアーナ?」
「……ね、ねえ、アマカワ。これが本当にあなたのステータスなの?」
「そうだよ。ほら、ここに俺の名前があるじゃないか」
「……しょ、職業が賢者って!?」
「んあ? あぁ、賢者だな。全く使えない賢者だけど」
「何を言ってるのよ! 賢者で魔法が使えないとか、あり得ないわよ!」
魔法が使えない賢者の方があり得ないと思うんだが。
そう思い俺は自分の魔力の項目をリリアーナに見せることにした。
「ここを見てくれ」
「ここって、魔力……ん? ……んん~? ……アマカワ、これは何かの冗談なの?」
「いや、見えているのが紛れもない現実だよ」
「……魔力54って、私より断然低いじゃないのよ」
「そういうこと」
「どういうこと?」
……え、ここまで見せてなんで分からないんだよ。
「職業は賢者だけど、使える魔法がないんだよ」
はっきりと言ってやったぞ。これなら理解して……あ、あれ? なんでそんなあり得ないみたいな顔してるんだよ。
「えっと、確かに魔力54は低いけど、魔法が使えないわけじゃないわよね。初級の魔法なら全然使えるはずよ?」
「……あー、なるほど、そういうことか」
リリアーナが理解できなかった理由がようやく分かった。
賢者ならば簡単な魔法も使えるだろうと思い込んでいるのだ。
だが、俺の場合は強力な魔法しか使えず、簡単な魔法が一切使えない。
「俺は簡単な魔法を一切使えないんだ。リリアーナが言っている初級の魔法とやらも使えないぞ」
「……職業、賢者だよね?」
「それも紛れもない事実だよ。魔法欄、見てみるか?」
そう言って俺は画面を魔法欄に変更する。
魔法名を見たリリアーナの表情をチラリと盗み見てみたが……うん、顎が外れたのかというくらいに大口を開けているよ。
「…………う、失われた
「これが魔力54で使えるわけがないだろう?」
「いや、ちょっと待って! 初級魔法があるはずでしょう! 初級魔法が……初級……魔法が…………な、ない?」
そうだよな、俺だって驚いたんだよ。
初級だのなんだのは分からなかったが、使える魔法がなかったことに。
一応、俺は賢者だからなー。
「……えっと……その、なんていうか…………が、頑張ろうね」
絞り出した言葉がそれかよ!
「まあ、そこはいいんだ。もう魔法を使うことはしばらく諦めているからな。見てほしいのはこっちなんだよ」
そう言ってスキル欄に切り替えてリリアーナに見てもらう。
「ここにあるスキルポイントを使って、俺は任意のスキルを手に入れることができるんだ。それで、便利なスキルがあれば教えてほしいんだが」
「……もう、これができることを賢者と呼んでいいんじゃないの?」
「リリアーナの話を聞くとそうかもしれないと思うが、一応賢者なので魔法はいつか使いたい。魔法を使えてこその賢者だと思いたいんだ!」
「まあ、それが普通だよね。それじゃあスキルだけど……」
リリアーナが視線をスキル欄に落としてじっくり見ている。
そんな横顔をチラッと見ていると、エルフって本当に美しいんだなぁと思ってしまう。
日本にいた頃はモテ期など一切来ず、先生からの連絡を伝えるくらいでしか女性と話をしたことがなかった。
……いや、あの駄女神とは話をしていたか……ほとんど一方的だったけど。
よく考えてみると、今はどうして普通に会話ができているのだろう。本来なら恥ずかしくてどもってしまい、声も小さくなるのが俺という人物なのだが。
「……ねえ、アマガワアアアアッ!」
「うわあっ! ……い、いきなり大声をあげるなよ!」
「ご、ごめん! いや、でも、今のはアマカワが悪いわよ! そ、そんな近くでこっちを見るなあ!」
「……いや、顔を見ないと話にならんだろう」
俺が言えた言葉じゃないがな!
「ちょっと待って! ……すぅー……はぁー……すぅー……はぁー…………だ、大丈夫よ!」
「……そ、そうか。それで、どうしたんだ?」
「この、重力制御ってスキルだけど、これを習得できないかな?」
「重力制御はっと……うお、12ポイントも使うのか。でも、習得できないわけじゃないけど、これがどうしたんだ?」
「空間魔法には重力制御魔法もあるんだけど、もしかしたらこのスキルを習得することで空間魔法を使えるようになるんじゃないかと思ったの」
「ほ、本当か!」
「いや、たぶんだよ。その、私もこんなステータス画面は見たことがないの」
可能性が見えただけでもありがたい! それに、これで空間魔法が使えなくても、発展スキルが出てくる可能性もあるんだからな!
それに、重力制御って名前だけでも明らかに凄いスキルだろうし、12ポイントも使うんだから絶対に使えるスキルだろう!
「……よし、これで重力制御スキルは習得っと」
「こ、こんな簡単に習得できるとか、本当にアマカワは賢者なのね」
「これが賢者の概念かはさておき、発展スキルは……ん、これは?」
「どうしたの、何か出たの?」
俺がじーっとスキル欄を見ていたからだろう、リリアーナも気になったようで顔を近づけて覗き込んできた。
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