2日目
と、化かし合い合戦が始まりました。
最初はキツネの番。
朝早く森を抜け街道に出るとあるものに化けました。
「おかしいわね……」
昼を過ぎてもタヌキはいっこうに現れません。待ちくたびれてキツネは、タヌキの様子を森へ見に行こうと思いましたが……。
「いけない、いけない……。きっとあのタヌキ。アタイが化けるのを止めた途端、ひょっこり顔を出してあたかも見つけたようなことを言うに決まっているわ!」
と、キツネは我慢我慢と言い聞かせます。
今は枯れ木になった柿の実に化けているところ。
そろそろ冬も近づいてくる中で、寒い風が吹く中、じっと枝にしがみ付いてるキツネは我慢の限界が近づいていました。
そんなところにひとりの人間が街道を歩いてきます。
「あの人間はタヌキが化けたのかしら?」
朝から街道を見ていましたが通りかかる人はひとりもいません。タヌキも来ませんし、ひょっとして……と、キツネは思いましたが、痩せ細ったひ弱な人間。あの太鼓腹のタヌキが化けているとは見えません。
「腹がへったなぁ……タヌキに化かされて、荷物も取れててしまうし……」
などとお腹を抱えてブツブツ話しているものですから、その人間は間違いなくタヌキではない、とキツネは確信しました。
そして、そのまま柿に化けたキツネの前を通り過ぎていきます。ですが、キツネは見栄えを気にして実に見事に大きく
腹を空かせた人間はそれが目に入ったのでしょう。
「枯れ木に柿とは!? これは天神様の思し召しか!」
タヌキに化かされて腹を空かせていた人間は、それを口にしようと手を伸ばしました。しかし、手が届きません。枯れ木を蹴飛ばしてもキツネは一生懸命落ちないように枝にしがみついています。腹を立ててそこらに転がっていた棒きれを手に取り、ついにはたたき落としてしまいました。
人間は見てびっくり。落ちた柿がキツネになったではありませんか。
「タヌキの次はキツネか!」
人間は仕返しとばかりに、手にした棒きれを振り下ろしました。
「痛い、痛い!」
棒で殴られたものですから、さすがにキツネはたまらない、と慌てて森の中に逃げていきました。
森の中に隠れて一息ついているキツネの後ろから声が聞こえてきました。
「枯れ木に柿になるからあんな目に遭うんだよ」
朝から顔を見せなかった太鼓腹のタヌキがそこにいます。どうやら先程キツネを叩いた人間の持ち物か、頭には笠を被り、合羽や荷物を持っていました。
「僕の勝ち」
「無しよ。あなたが見つけていないでしょ!」
と、キツネは抗議しました。確かにルールは見つけるかです。
「分かったよ。では、明日は僕の番だ」
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