第20話 どんどん面談


 メドゥーナには、他の使用人が起きている間は休むように指示を出した。


【忠誠度 35→75】


 それだけでメチャクチャ上昇した。


 さらに。


「隣の部屋をメドゥーナ専用にしよう」

「!?」


 お嬢様の部屋は二つあって、扉でひと続きになっているのだ。

 するとメドゥーナは、サーシャとともに立ち上がって驚いた。


「……(ふるふるふるふる!)」

「え? いやなの?」


 たしかに俺、中身男だけど……。


「……(ふるふるふるふる!)」


 メチャクチャ首をブンブン振っている。


「お嬢様、メドゥーナはきっとこう言いたいのです。そんな恐れ多いと」

「え、そう? でも今は使っていないし、隣なら護衛もしやすいだろうし……」

「しかし、お嬢様のご衣装部屋でもあるのですよ?」

「あの衣装は近々売り払うつもりでいるから大丈夫です。もう完全にメドゥーナの私室にしちゃって下さい!」

「お嬢様……」

「……(ウルウル)」


 え、泣くほどのものかな?

 まあ、とにかくこれで、メドゥーナの忠誠度はMAXになった。

 ふかふかのベットでゆっくり休んでね!


 次はメイド3人娘だ。


「おじょーさま!」

「うおー! おじょーさまが元気になったのだー!」

「おじょーさまですー! ブベッ!」


 ドジっ子のメイシャが、ドレスの裾を踏んで転んだ。

 お約束だなぁ……。


 3人とも髪の色は茶色。

 アルルはお姉さんっぽく、メイシャとコルンは妹っぽい感じ。

 とにかく賑やかで、しばしばサーシャを悩ませている3人だ。

 ひとまずステ値を確認。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前 アルル (忠誠度:85)

身分 中級使用人

職業 メイド

年齢 20

性格 あわてんぼう


【HP 60】 【MP 30】


【腕力  15】 【魔力  15】 

【体幹力 15】 【精神力 15】

【脚力  15】


【身長 150】 【体重 35】


耐性   なし

特殊能力 清掃技能B 調理技能C

月間コスト 15万アルス


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前 メイシャ (忠誠度:90)

身分 初級使用人

職業 メイド

年齢 14

性格 ドジっ子


【HP 55】 【MP 15】


【腕力  8】 【魔力  10】 

【体幹力 5】 【精神力 5】

【脚力  8】


【身長 145】 【体重 40】


耐性   なし

特殊能力 清掃技能C

月間コスト 10万アルス


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前 コルン (忠誠度:85)

身分 下級使用人

職業 メイド

年齢 13

性格 おてんば


【HP 45】 【MP 15】


【腕力  5】  【魔力  2】 

【体幹力 10】 【精神力 1】

【脚力  5】


【身長 150】 【体重 42】


耐性   打撃C

特殊能力 なし

スキル 突撃

月間コスト 10万アルス


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 全員、最初より5づつ忠誠度が上がっている。

 ゴブリン討伐の成果だろう。


 コストは3人合わせて35万アルスであり、セバスさん一人分だ。

 忠誠度がMAXでないのは、給料の低さが原因かもしれない。


「うんと3人とも、なにか不足があったら、遠慮なく言ってほしいんだ」

「え!?」「それは……!」「そのお……」


 やっぱり言いづらいか、サーシャもいるもんな。


「お嬢様、この子達を甘やかしてはいけません!」

「う、うん? でも結構頑張ってくれているみたいだけど……」


 屋敷の中はいつも綺麗だもんな。

 それにメイドを雇うというのは、家の格を上げる意味もある。

 3人とも伸びしろがありそうだし、あまり手放したくない。


「ただ、やっぱり3人の給料ってちょっと安いと思うんだよなぁ」

「そんなことございません! アルルはともかく、メイシャとコルンは穀潰しもよいところです! 二人ともこの間、厨房で余り物をつまんでいたでしょう!」

「はうっ!?」

「ばれてた!?」


 そんなことをしていたのか……。


「お嬢様は食べたものを全部筋肉に変えて頑張っておられます! そのひとつまみがお嬢様を殺すかもしれないのですよ!?」

「ガクガク……」

「ブルブル……」


 確かに、あとちょっとウェイト足りなかったら負けてたかもだけど……。


「ま、まあそう怒らないで、サーシャ」

「しかし……」

「二人とも食べ盛りなんだから仕方がない。今度からは、お腹が空いていたらちゃんと言うんだよ?」


 つまみ食いはイカンが、堂々食いはあり!


「ふぁ……!」

「はい……!」


 よしよし、良い子良い子……。


「で、ではそのお嬢様!」

「おおお、お願いがあるのだー!」


 すると2人は、目をらんらんとさせて言ってきた。


「私達、料理を覚えたいんです!」

「覚えたいのだー!」

「ほほう?」


 今の公爵家には料理技能を持った人が結構いる。

 だからメイド達にはあんまりやらせていなかったのだが。


「またそんなことを言って! どうせ味見がしたいだけなんでしょう?」

「うっ……!」

「うぐ……!」


 それもあるって、ちゃんと顔に書いてあるな。

 でも。


「いいんじゃないかなっ?」

「お嬢様!」


 サーシャは当然諌めてくるが。


「ただし、条件がある!」


 俺はここで、絶妙な一手を繰り出した。

 2人は、期待の眼差しで身を乗り出してくる。


「食べた分はちゃんと身体を鍛えること。それだけ約束してくれるなら、好きに厨房の食材を使ってくれてかまわないよ!」


 オトハ流、肉体改造計画の始まりである!


「え! 好きに使って!」

「よいのだー!?」

「うん! それで美味しいものができたら、みんなにも食べさせてあげること!」

「は、はい!」

「やったー!」


 飛び上がって喜ぶメイシャとコルン。

 これで2人が能力を上げてくれるなら、けして悪い投資じゃない。

 なんならアイアンメイスも貸してあげよう!


「本当にオトハ様はお優しいのですから……。では私がしっかりと、この子達がおデブちゃんにならないように見張っておきます」

「うん、頼みます、サーシャ」


 メイシャとコルンに関しては、これで忠誠度がMAXになった。

 よし、この調子で全員MAXにしちゃうぞ!


「アルルは、何か覚えたいことはない?」

「は、はい、実は私、その……」


 するとアルルは、俺ではなくサーシャの方をチラチラと見た。


「弓を習いたいんです!」

「え?」


 サーシャが驚いた顔をする。


「その、私……落ち着きがないってよく言われて、ちょっとしたことですぐにあがってしまうんです。だからもっと、精神的に強くなりたいと思っていたんです……」


 ふむふむ……それで弓か。


「メイド長が弓の練習をしている姿を見ていて、すごく落ち着いていて、それでいて、ピンと張り詰めた緊張感があって……ずっとその……憧れていたんです!」

「まあ、そうだったの?」


 感心したように言うサーシャ。

 俺もまた、胸の奥に熱いものを感じた。


「うん、いいね! サーシャさん、アルルに弓を教えてやってくれないかな?」

「はい、アルルがそのような望みを持っていると知りませんでした、謹んでお受けいたしましょう」

「あ、ありがとうございます!」

「ただし」


 しかしそこで、サーシャは3人のメイド達にむかってピシリと釘を指す。


「あなた達は、オトハ様の計らいによって、成長の機会を得られたのです。より早く完璧に仕事を終わらせることで、その恩に報いること! でなければ弓の練習も、料理の練習もありませんよ! 良いですか!?」

「「「はい!」」」


 綺麗にそろった3つの声。

 真剣な眼差しで向き合うメイド達の姿は、どうしようもなく眩しかった……。



 * * *



「オトハお嬢様、ワシの首をお跳ねくだされい!」


 と言ってダルスさんは、床に膝をつくとシャツの襟をまくって首を出した。


「え! どうたんですっ!?」

「お嬢様が大変だったときに、このダルス、ぐーぐーいびきをかいて寝ておったのです! このまま、おめおめと生きながらえては、先代に申し訳がたちませぬわー!」


 いやまて! 落ち着いて!


「こここ、こっちこそ、ダルスさんを呼べなくてすんません……!」


 クマをトレインするより先に、ダルスさんを呼んだ方が良かったんじゃないかと、後々になって反省したものだ。

 ひとまず落ち着いてもらって、ステ値を確認。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前 ダルス (忠誠度:100)

身分 村人

職業 庭師

年齢 53

性格 働き者


【HP 120】 【MP 10】


【腕力  56】 【魔力  1】 

【体幹力 40】 【精神力 20】

【脚力  50】


【身長 160】 【体重 85】


耐性   毒B

特殊能力 栽培技能A 御者B

月間コスト 20万アルス


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 95だった忠誠値は、すでにMAXになっていた。

 なんたって首を差し出すくらいだからな。


「ダルスさんは、毒に強いんですか?」

「そうなんですわー、ワシ、キノコが大好きで、よく山で採って食べておるんです。それで、毒があるとわかっているキノコでもついつい食べてしまうのです」


 大丈夫なの!?


「いやー、毒のあるものほどウマかったりして……ふへへ。そうしているうちに、毒の耐性がつきましたわな」

「な、なるほど……」


 そうやって自分を鍛える方法もあるのか。

 奥が深い……。


「では、ダルスさんはキノコに詳しいんですね」

「はいですじゃ」

「今度教えて下さい!」

「ほっほっほ、喜んでお教えしますぞ!」


 んでもって、メイシャとコルンが料理を覚えたら、何か作ってもらおーっと。


 ダルスさんは他にも、栽培技能や御者といったスキルを身につけている。

 その割には20万アルスという低コスト。

 これは領主としての器を問われることなので、当然、賃上げを提案してみる。


「とんでもございません! このような下賤の身にはもったいのうございます!」

「いや、でも……ダルスさんの能力を考えれば」

「いえいえ! もってのほかにございます!」


 そこまで固辞されてはな……。

 なんて謙虚な人なんだ。


「もし、お金を使うのでしたら、庭手入れの資金を増やしてくださりますれば……」

「庭手入れの資金?」

「オトハ様、財務状況にその他の支出があったかと思います」

「ああ、あれか……」


 サーシャに言われて思い出す。

 その他の支出に、月32万アルスが計上されているのだ。


「そうなのですじゃ。庭の手入れには毎月10万アルスを頂いております。これを増やして頂ければ、もっと花壇を豪華にするなど、色々なことができますのじゃ」

「なるほど、じゃあこれを倍の20万アルスにしよう」

「ありがとうございます、お嬢様。必ずや見事な花壇に仕上げてみせますぞ!」


 なんという働き者なんだ!

 きっとナウ◯カさんがその手を褒めてくれるに違いない……。


「じゃあ次は……」


 画家のブラムさんだな。

 さっそくセバスさんに呼びにいかせるが……。


「お嬢様、ブラムはアトリエにこもったきり出てまいりません」

「なんと……!」


 呼び出しを拒否されてしまった!


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