第6章 第1話

放課後の学校の廊下で、俺は涼介を待つ。


人混みの中から俺を見つけた涼介は、大きなため息をついた。


「ホントしつこいよね、お前も」


「それはこっちのセリフだ」


「ろくに学校にも来てないくせに」


歩き始めた涼介の隣に、俺は並ぶ。


「どこに行ってたんだよ」


「お前には関係ない」


「あっそ」


彼の横顔は、怒っているようにも見えた。


「なんで俺じゃなきゃダメなんだよ。せめてその理由を聞かせろ」


「だから、金の矢が刺さったからだって」


「俺は真面目に聞いてんだけど」


涼介は頭をボリボリと掻いた。


何を言っても信じてもらえないのは、悪魔の特性なのかもしれない。


「そうだ、涼介。友達はほしくないか? お前いっつも一人だろ。ちやほやしてくれる、優しい友達がいれば、それでよくないか? そういうの、いいだろ?」


涼介は深く長い息を吐いただけで、歩みを止めようとはしない。


「な、便利だろ? 気分いいし。たまんないよな。じゃあ、俺がなってやるよ。ちょうどいいだろ。悪魔の友達だなんて、他に持ってる奴、いないぞ?」


「それが契約内容か」


「友達の頼みなら、聞けるんじゃないのか」


「お前さ、もっと言い方とか、あんだろ。ちょっとは考えろよ」


「なにがだ」


友達がなんたらかんたらとか言い出したのは、涼介の方だ。


昨日の夜、人間研究の魔界書を読んだ。


人間と接する時には、友達のように親しく親切に接するのが、第一の手だと。

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