第685話 勇者ヨーリスと転生者ライナス その9

「勇者ヨーリス、その入れ替わりの能力は、相手の同意を得なくても発動できるのかしら?」


聖女アルフォンシーナは思うところがあり、居合わせた冒険者に話をした後、ヨーリスの所へ。

そしてヨーリスにいくつか確認する事に。


「アルフォンシーナ様、その・・・・直接同意を得なくてもできる場合があります。それは、相手が先に手を差し伸べて下さった場合です・・・・」

事態の重要さをうまく呑み込んでおらず、自身が勇者と呼ばれている事に気が付かないヨーリス。


「え?あの屑が先に手を差し出したのでございますか?」


信じられない事を聞いたかのような反応に、ヨーリスは戸惑う。

「多分聖女様の想像と違うと思います・・・・単に捕まえて僕を痛めつけたかっただけなんじゃないかと思うのです。」


「ああなるほど・・・・そう言われると納得ですわ。で・・・・あの屑が先に手を差し出したおかげで入れ替わる事が出来た・・・・と。で、今はその入れ替わりはできるのですか?」

「いえ・・・・今僕のスキルは勇者様の所にあるのですが、入れ替わりは他人では発動いたしません。あれはあくまで僕のためのユニークスキルの様で、入れ替わった相手は一時的に僕の入れ替わりのスキルを所持しているように見えて、使えないのです。」


しばし考え込むアルフォンシーナ。


「それを聞いて安心いたしました。さて・・・・貴方達も向かわれますか?」

「行った方がいいのでしたら・・・・」


「そうですわね・・・・ある意味今回の中心人物ですから・・・・本来あの2人とは貴方達は縁もゆかりもなく関係ないのですが、こういった形で出会ってしまったのもまた運命。今後の事もあります。道を誤った愚か者の末路を見ておくのもよいかもしれませんね・・・・アメリータ、そちらはどうかしら?」


今娘さんであるアメリータさんは、ライナスの所持している珠を調べているようです。


「これ以上調べても理解できない事柄が多いですし・・・・呪われていなさそうですので・・・・いけます。」

「ですが・・・・あんなのでもあれは貴方の実のち「あれを父親だと思った事は一度もありません!」ちお・・・・そうでしたね・・・・では様子を見に行きましょうか?」


・・・・

・・・

・・


「くそっ!どうなってやがる!」

「何でこいつらの攻撃が勇者に効いてんだ?」


今ヨーリスと能力を入れ替わっている勇者とその取り巻きイディオは、娼館で冒険者達に襲われていた。


しかも明らかに自分達より弱いはずの冒険者の攻撃を受け、あろう事か手傷を負い、混乱している2人。


今勇者は女神の加護を受けておらず、その供であるイディオもまた、勇者に与えられた加護の一部を勇者パーティとして受けていたので、その加護が無くなり苦戦しているのである。


「くそっくそっ!どうなってやがる!」


「ぐおおお・・・・なんで下っ端の攻撃で俺が怪我しないといけないんだ?おかしいだろう?」


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