第49話 おっさん、現実の厳しさに打ちひしがれる

これは夢なんだな、きっと。そうに違いない。


異世界に召喚されてしまうとか、そんな現実離れな出来事が現代日本にあるわけがない。


そうさ、おっさん夢を見てたんだよ。はははは・・・・・・


「・・・・様、シラカワ様、し、しっかりー」ぺちぺち


・・・・ここは何処だ?・・・・・・・・あー嬢ちゃんが心配そうな顔してる・・・・現実は非常だな。おっさん何か壊れちゃったかも。


「シラカワ様!気が付いた?あたいの事わかる?シラカワ様の奥さんのオリアーナだよ!」


いや、奥さん違うし、トレイナーの嬢ちゃんや。ドサクサで何言ってるんだか。


でも、もうどうでもいいって言うか、そんなにおっさんの奥さんになりたかったら今すぐ抱いてやるよ、とかあかん、人間落ち目になるといらん事考えてしまうな。


「あんた誰?」


「ひどい!あんなに愛し合ったあたいの事忘れちゃったの?」


愛し合ってないからね、まだ。でも、きっとそのうち・・・・


「どれぐらい気絶してた?」


「えっと、ほんの少しだよ?」


どうやらオリアーナ嬢、おっさんが倒れてからずっと色々してくれたらしい。


メーネアちゃんと香苗ちゃんはどうしたらいいかオロオロしてるだけで、こういう時肝の座った女性ってすごいよね。商人としてそれなりの修羅場を乗り越えたと思っちゃうオリアーナ嬢、流石!ちょっと惚れちゃったかも。


「あれ?ロニーさんは?」


ちなみに、トレイナー商会はおっさん達の住居兼店舗よりも、もう少し先にあるんだよね。なのでまだトレイナー親子はおっさん達と同行してたんだよ。


「父様はシラカワ様の作業場とトレイナー商会を見に行ってるよ。」


そう言いながらもおっさんに抱きついてくるオリアーナ嬢。あ、いつもと違い、えっちい感じがないな。何だろう、癒される感じ?


「あたいの胸で癒されちゃってね、シラカワ様」


台無しだよ。残念なオリアーナ嬢ちゃん。


まあ折角だから堪能しとこう。しかも、ちょっと汗ばんでるからいい女の匂いがしちゃってるし、おっさんに触れちゃってる色々な所が気持ちいいし、しばらく忘れよう・・・・



「あ、父様が帰ってきた!父様、どうだった?」


「オリアーナ、シラカワさんは大丈夫なのかい?こういう時特に気をつけないと立ち直れないかもしれないからな。」


「大丈夫よ、父様。シラカワ様はあたいがばっちり癒してるから。で、どうだったの?」


「うむ、向こうは概ね大丈夫だったが、シラカワさんの店を任せていたエノーラが腕を骨折してしまった。後は全員無事だし、作業場もトレイナー商会も無事だよ。」


「ロニーさん、ありがとう。みんな無事で何よりです。エノーラさんは後で治療します。」


「兎に角!ここにいても今はどうしようもないから、あたい達と一緒にトレイナー商会へ来てよね!」


「うん、わかった、任せるよ。」


考えるのを放棄しちゃったよ。


・・・・

・・・

・・


被害は、店の商品が全滅と、建物が全滅。人員に致命的な被害はなく、店で一番大事に扱わないといけない収納カバンと表示プレートは何とかエノーラさんが持ち出してくれたらしく、無事だったそうだ。


まあ、火事とか店が襲われた時はその2つは極力回収、後の商品はそのまま放置でいいから逃げるようにという決め事をしてたんだよね。


雇用条件は大切だからね。


幸い、作業場には被害がなかったから商品自体は残ってるんだけどね。

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