第66話 時の牢獄(1)
さっそくゴギョウは持ち帰った素材を使い、土台に壁を作ることにした。
石積みの土台の上に木製の柱を立て、梁を通してガワを組み立てていく。もちろんクラフトスキルでだ。
そこにスキルを使い白い土を嵌め込むように設置していく。
乾かしたり、固めたりすることもなくみるみるうちに壁が出来上がる。
屋根の形状はオットに聞き、三角に組んだ木枠に敷板を固定、薄く切り出した石材を瓦のように並べていく。
そこで木材が尽きてしまい、木の苗を空いたスペースにあるだけ植えた。
そういえばシャギアが初め、扉を作ってくれと言っていたのをこの時思い出した。おそらく数日のうちに大量の木材が回収できるだろうから、その時一番に作ろうとゴギョウは頭の中にメモを残した。
わずかな時間で小さいとはいえ、一軒の家をほとんど建ててしまったゴギョウを見て改めて驚いているオットはシャギアと何か話したあと、すぐに隠れ家に戻っていった。
おそらく近いうちに戻ってくるのだろう。家族と共に。
それから七日が過ぎた。
ゴギョウの建てる家はワンパターンで、せいぜいリビングキッチンの部屋、寝室、風呂トイレがあるだけの四角い建物ばかりだったので、オットやその家族から間取りの希望を教えてもらいさらに数軒建てた。
合わせて水路や倉庫なんかもクラフトしていく。
石材が足りなくなれば安全地帯から出て、黒霊を処理しつつ廃墟から回収していった。
廃墟はほとんど更地になり、徘徊していた黒霊が何体も視界に入ってくる。
遮るものがないためそれなりの距離から発見され襲われたり、炎が飛んできたりする。
それなりの数を倒したが、一晩もすればまた数が増え元通りになってしまう。
「シャギア、あれは減らないの?どこから来てるんだ?」
朝早くからシャギアの元を訪ね、ゴギョウは聞いた。
「ンフ……、あいつらはいくらでも出てくるわ…」
「だよなあ、いくら倒しても時間が経ったら元に戻っているんだよ」
「あいつらは、時の牢獄に囚われているのよ…、この里の…魔法…」
少し俯いて、シャギアは考え込むように沈黙した。
ゴギョウは奪われたというこの里の魔法についてまだ、詳しくは聞いていない。
「どんな魔法だったんだ?」
「不思議な魔法よ…、過去や未来に触れる、不思議な魔法…」
「不思議?この里の人たちは使えたんじゃないのか?」
「ええ、使えたわ…でも、使い方は分からなかった…だから、隠していたのよ…とても危ない魔法だもの…」
危ない魔法。
奪われ、使用された末に生まれた黒霊達。
「あいつらの数は、おそらく二十くらいよ…それよりは増えないし、倒したところで元に戻るわ…」
「どうにかして全て倒せないんだろうか?あんなのが近くにいたら安心して暮らせないんじゃあないか?」
シャギアはその方法はわからないと言う。だからこそ、青い石の結界、安全地帯が必要だったんだろう。
それでも、問題は解決しない。
不思議な魔法は、過去や未来をどうにかするような魔法とだけはわかっていた。
ゴギョウは、オットたちにも話を聞いてみることにした。
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