第3話 旅に出ようじゃないか
さて、出たのは良い。
先ずは街に行ってみよう。私の記憶を辿っていくと、「ギルネス」という街が近かったはず。
「もうなくなってたりして」
笑いながら、歩み始める。広がる平原。たまに見かけるのは多くの人を乗せた馬車。乗っている人間は剣やら槍、見たことない細い筒状の何か。たぶん噂の「魔法銃」というものだろう。良いデザインをしているが、私も遠距離武器は欲しかったんだよね。
クロスボウは私の腕には合わなかったし、何より装填が面倒だったからなぁ。
私も買えるだろうか?少し楽しみが増えた。
その反動で不安も出たけど。何とかなるだろう。
それにしても。
「……」
馬車に乗っている人、大半が女性だ。しかも私を見るなり、ぼそぼそと何か言ってるし。私、何かした?取りあえず、邪魔になりそうだから避けよう。
*
今、私は近くの街までタダ乗りで揺られている。
金がないから街に着くまで護衛って訳。まぁここら辺は魔物は弱いから特に出番はない感じかな?このまま街に着ければ問題無しなんだけどね。
その時だった。
ガタン
「?」
突然馬車の進みが止まる。賊でも出たのだろうか?
少しだけ顔を出すと、魔物が10体くらいいる。
「魔物か!」
乗っていた女性が馬車から降り、剣を構える。
もう一人の女性も馬車から降りては魔法銃を構えた。
魔物はオーガとジャイアントオークか。数的に半々の数。私にとって雑魚に等しいが、飛び出した二人はどこまで戦えるか見物しておくか。
オーガは珍しく金棒持ち、ジャイアントオークはなまくらの大剣を所持している。
全員接近戦特化型か、二人とも強そうだし大丈夫だね。
「はあぁぁ!」
「援護するぞ!」
良い声の掛け合いと連携が魔物たちを押してる。出番がないから空でも眺めてようかなと思った矢先だった。
「おい!護衛なんだろ!戦え!数的にこっちが不利だ!」
いいじゃん。攻撃を往なしながら
「どうしようかなぁ」
迷っている時、魔法銃を持っていた女性は焦り顔になる。
「拙い!魔力切れになった!」
「無駄撃ちするからだ!」
あーあ……せっかく楽して街に行こうとしていた
私は馬車から降り、鞘から魔剣を抜く。
「仕方ないねぇ」
抜いた魔剣が虹色に輝く。その輝きを見た魔物たちは立ち止まる。
「じゃあまずは初歩的な技でも撃っておくか」
魔剣を構え、刃に魔力を込めた後、右横一直線に薙ぎ払う。
「【
放たれた黒い鎌鼬が10体中8体のオーガとジャイアントオークを一撃で両断する。続けて私は残った2体の魔物に突撃する。
魔剣は黒い炎と風を纏いはじめ、対象を滅さんとする力を放つ。
「【
私が横に一回転すると風と炎と斬撃が合わさった竜巻が発生し、2体の魔物を巻き込む。巻き込まれた魔物は跡形も残らず、消し飛ばされる。
目前の敵がいなくなった事を確認した後、馬車の方を振り向く。
戦ってくれた女性二人と騎手、残りの乗客が私に対し、驚愕な表情になっていた。
「魔物は倒したよ?」
「アンタ……魔剣士だったの?」
「は?違うよ?」
私が否定しようとした時、魔法銃を持ってた女性がツッコんだ。
「いやいや、あんなにすごい斬撃を放てるのは魔剣士か魔族の連中くらいよ!?」
「アンタ…何者?」
何か面倒だなぁ……。
「私?ネクロ・ヴァルハラ。ただの人形使いだけど?」
その言葉に二人は「嘘つけ!」と言って怒る。事実なんだけど……。
「では何だ?人形を使うまでもないほど、あいつらは弱いというのか?」
「うん。だから私は何もしない感じにしてたんだけど」
それを聞いた二人は敗北を味わったような表情へと落ちていた。
「は……ははは……私はただの人形使いに劣っていたというのか?」
ヤバイ、空気が悪化した。
何とかしないと…。
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