人形使いの冒険譚~何かいつの間にか最強になってたよ~

ヒラン

プロローグ

第1話 元黒幕

とある古戦場にて、凶悪な悪魔らしき姿の者と勇者が激闘を繰り広げていた。


「覚悟しろ!魔王 ロクザム!」


「覚悟するのは貴様だ…勇者ガベルよ」


ぶつかる二つの闘志、疾風、広がる獄炎、降り注ぐ雷、両者共々息が上がっている頃だった。


「!」

「……誰だ?」



二人の戦いを邪魔するように現れたのはたった一人の人形使いだった。

相方に巨大な斧を持った少女のような人形が殺意を出し、二人を睨む。


勇者は味方かを探り、魔王も増援かと聞こうとする。


「「味方か?」」



その言葉に人形使いはニヤリと笑う。


「味方……ではないねぇ。はっきり言うと、君達二人を始末しに来たよ」


「何だと?貴様正気か?」


魔王が問う。しかし答えを言う前にある人形使いが命令を下した。


「あー、皆まで言うな。先に魔王君。君から逝きなさい。タナトス、魔王を殺しなさい」


巨大な斧を持った少女人形は頷き、魔王に襲い掛かる。


「愚かな!」


愚か————それは魔王の方だった。魔法と物理は優れていたが、それはあくまで序盤までだ。勇者と戦って疲弊した魔王は弱体化した魔族に過ぎない。


タナトスの持つ斧の刃の色が虹色に変わり、莫大な魔力を秘めながら振り上げられる。


『秘奥義【終焉の戦斧ラグナロク・アックス】』


振り下ろされた魔力の斧が勇者を苦戦させた魔王を一瞬で消し飛ばした。

肉体も意志も魂ですらも消えたのであった。


「さて、残ったのは君だけだ。勇者君」


「……!」


「どうやって消してあげようか」考える人形使い。タナトスと呼ばれている人形は指示を待つかのように武器を構え、勇者を睨みつける。


「君は今まで、様々な善行を行ってきた。国は君を勇者、英雄、守り神、導師とも呼ばれているほど人気になった」


「……何が言いたい?」


人形使いは「ああ、失礼」と軽く笑った後、人形に命令を下す。


「タナトス、周囲にいる雑魚を根絶やしにしてきたまえ。私は勇者君を片付けるよ」


その指示にタナトスは首を縦に振り、その場を離れる。


「さて、勇者ガベル。君はここでおしまいだ。神に選ばれた者は悪しきものを倒した後、用済みで捨てられる。そんな皮肉な運命から君を開放してあげよう」


「くっ……」


勇者は聖剣を構える。お互いにステータスが見える状態の戦い。勇者は確実に弱っていた。魔族の軍団に立ち向かった勇敢な戦士いえど、所詮は人間。神に選ばれて特殊な力を持ったとして身体能力は人以上、神以下だ。要は簡単に屠れる。


人形使いは懐から剣を抜く。ただその剣は通常の剣ではなく、「魔剣」だった。

聖剣に対を成す魔力の剣、あらゆる常識を覆すたった1本しかない伝説の魔剣。


〈抹消剣トリスケリオン〉————


それが彼の武器だった。


「じゃあね、勇者君。御苦労様でした」


魔剣が振り下ろされ、英雄は斬られる。辺りは血の海が広がり、世界を救う者の遺体が人形使いの足元に転がった。


「これで全て終わったよ……全ては君の望み通りだ。〈トリスケリオン〉……」



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