118話 すごろく大会①
テーブルに広げられた大きな画用紙には、『スタート』と『ゴール』の文字、そしてたくさんのマス目が書き記されている。
私たちは各々がペンを握り、日常生活ではまず使う機会のないサイズの画用紙と向き合う。
今日は創作部による第一回すごろく大会。マス目の空欄は最終的に一つ残らずお題で埋まる予定なので、安全地帯は存在しない。
『ランダム』と書かれたマス目が数ヵ所あり、そこに止まると別途用意してあるお題箱から一枚引いて、メモに記された指示に従うことになる。なんとなくだけど、嫌な予感が頭をよぎる。
「うふふ❤ どんなお題にしようかしらぁ❤」
「マス目がたくさんあるから、いろいろ書けるね!」
「こ、こういうの、なんだか、な、懐かしい」
「幼稚園の頃によくやってた気がするわ」
「こうして準備する段階ですでに楽しいですよね」
いつもと同じく、心に安らぎと楽しさを与えてくれる和気あいあいとした雰囲気。
きっと先輩たちは幼い頃を思い出してかわいらしい内容のお題を書いているのだろう――なんて、油断していると痛い目に遭うに違いない。
チラリと、先輩たちが書いたお題を覗き見してみる。
「みんな、無理なお題は書いちゃダメよ❤」
微笑みながらそう告げた姫歌先輩は、『悠理の好きなところを百個言う』と書き終えたところだ。
百個!? というか、私が止まったらどうすればいいの!?
そんな驚きを内に秘めたまま、葵先輩の手元に視線を移す。
「うんっ、もちろん分かってるよ~」
朗らかに笑う彼女が書いた内容は、『腕立て伏せ百回(できるところまででOK!)』というもの。
できるところまででいいというのが良心的だけど、なかなかにハードだ。
「お、思いやりが、た、大切だよね」
心の底から同意できる意見を口にしたアリス先輩。
それゆえに、『みんなで考えたエッチなセリフを感情たっぷりに読む』というお題が冗談であると思いたい。
「それでいて適度にキツいぐらいがベストだわ」
確かに、真里亜先輩の意見にも同感だ。
ほどよい刺激がもたらすハラハラ感は、ゲームの醍醐味と言える。
ただし、『最近見た恥ずかしい夢の内容を暴露する』というのは刺激が強すぎる。
雑談しながら手を進め、あれだけ空白が目立っていたマス目もかなり埋まってきた。
この辺りで、お題箱にも着手することに。
「あっ」
葵先輩が手を滑らせ、メモ用紙がテーブルの中央に舞い落ちる。
そこには、『みんなで順番に悠理のおっぱいを吸う!』と書いてあった。
驚愕のあまり言葉を失い、ゴクリと息を呑む。
驚いているのが私だけという事実に気付き、背筋が凍る。
どうやら、嫌な予感が的中してしまったらしい。
果たして私は、理性を保ったままゴールにたどり着くことができるのだろうか。
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