95話 ちょっとした外出

 夏休み初日は、みんなでショッピングモールに出かけることになった。

 少し遅めの朝ごはんを食べて、リビングで作業や宿題を進め、昼過ぎに家を出る。

 しばらく歩いて住宅街を抜け、出発から半時間ほどで目的地に着く。

 両親とは何度も来たけど、先輩たちと来るのは二度目だ。

 前回は食材を買うために訪れ、今回はこれと言った目的は決めていない。


「まずはゲームコーナーにでも行きますか?」


「いいね~、クレーンゲームやりたい!」


 私の提案を聞くや否や、葵先輩が目を輝かせる。

 反対する人は誰もいなかったので、ゲームコーナーに向かって通路を進む。

 クレーンゲームの台数はそれなりに多く、とりあえず一通り見て回る。

 大きなクマのぬいぐるみが目に留まり、みんなが見守る中、葵先輩が百円玉を投入した。


「うふふ❤ 葵、頑張って❤」


「任せて! あーしの腕にかかれば、一発でゲットしちゃうよ~!」


 自信満々にアームを操作する葵先輩。

 残念ながら一発ゲットとはいかなかったものの、見事にほんの数回で獲得する。

 ゲットすると同時に軽快な音楽が鳴り、近くにいた店員さんが持ち運び用の袋を渡してくれた。

 しばらく楽しんでからゲームコーナーを後にして、ふと目に付いた水着売り場へ赴く。


「これはぜひ悠理に着てもらいたいわね」


 真剣な様相でつぶやく真里亜先輩の目の前にあるのは、超大胆な水――うーん、水着? 紐としか言えないような商品だった。


「嫌ですよ、恥ずかしいですっ」


 自分が身に着けた姿を想像するだけで顔が熱くなる。


「い、家の中だけでも、だ、ダメ?」


 おねだりするように、アリス先輩が見つめてきた。

 申し訳ないけど、恥ずかしいものは恥ずかしい。

 押し切られそうで怖いから、強引に話題を逸らし、どうにか難を逃れた。

 いろいろ見て回った後は、食品売り場で数日分の食材を調達してから帰路に着く。

 なんてことのない休日の過ごし方なのに、先輩たちが一緒というだけで満足度は果てしなく跳ね上がる。

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