83話 みんなで買い出し
食材を求め、私たち創作部一同は最寄りのショッピングモールに足を運んだ。
カートにカゴを乗せ、まずは野菜売り場へ。
ついさっき、休日に私服で恋人と出かけるという行為はデートに他ならないと気付いてから、みんな少なからず緊張してしまっている。
「緊張しすぎて、キャベツとレタスを間違えそうです」
さすがにそこまで冷静さを欠いているわけじゃないけど、場を和ませるための冗談として言ってみた。
「うふふ❤ わたしも緊張のあまり、人前であることを忘れてしまいそうだわぁ❤」
「うっかり部室にいるときの感覚で接しちゃいそうだよね~」
「ゆ、悠理、いざというときは、あ、アリスたちから、逃げてね」
「本能的な行動とはいえ、公衆の面前で恋人を恥ずかしい目に遭わせるわけにはいかないわよね」
「あはは、先輩たちも冗談が上手いですね」
せっかくのデートで緊張し続けるのももったいない。
先輩たちが私の冗談に便乗してくれたおかげで、緊張が和らいだ。
「「「「「冗談?」」」」」
見事なまでにピッタリと、先輩たちの声が重なる。
仮にあらかじめ打ち合わせしていたとしても、ここまできれいには重ならないんじゃないだろうか。
「え?」
冗談……ですよね?
野菜売り場でカボチャや玉ねぎ、キノコ類をカゴに入れてから、魚介類、お肉とメインになる食材を選んだ。
生活費を負担してもらっている立場なので贅沢は厳禁だけど、目利きの真里亜先輩が安価にして上質な品を吟味してくれた。
ついでに砂糖や塩など、普段の生活に必要な調味料も調達しておく。
一時は人前であられもない姿を晒す不安に駆られたものの、どうにか無事にレジまで辿り着けた。
まぁ、売り場の死角で姫歌先輩が耳に息を吹きかけてきたり、カートを押す係を交代すると言って葵先輩がどさくさに紛れて胸を触ってきたり、棚の上部にある商品を取ろうと腕を上げたタイミングでアリス先輩が腋に顔を近付けてきたり、真里亜先輩がワサビやからしを手に取ると同時に物欲しそうな目で私を見てきたり、そういった出来事は何度かあったけども。
大きなアクシデントはなく、手分けして荷物を持って帰路に着く。
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