43話 魅力的な食べ方

「悠理に口移しでいろいろ食べさせてもらいたいわぁ❤」


 作業に一区切り付いたらしい姫歌先輩が、ノートパソコンをパタンと閉じつつ言った。


「いきなりなにを言い出すんですか」


 いくら恋人とはいえ、さすがにハードルが高い。

 でも、いずれキスを経験した後なら……。


「いいね~、何倍もおいしく感じそう!」


 葵先輩もペンを置き、声を弾ませて同意する。


「あ、アリスは、口移しもいいけど、ゆ、悠理のパンツを器にして、食べてみたい」


 テーブルの下から、とんでもない意見が飛び出す。

 私からしてみれば罰ゲームでしかないけど、自分の下着ではなく先輩たちの下着だと考えれば、魅力を感じてしまう。


「無理やり口に詰め込まれるのもいいわね。限界を超えて食べさせられて、吐き出そうとしたら口を塞がれ、飲み込んだところでお腹を殴られる……んはぁっ、想像しただけで興奮するわ!」


 真里亜先輩が一人で盛り上がり、息を荒くする。

 よい子も悪い子も、絶対に真似してはいけない。


「今後の参考に、悠理の意見も聞かせてもらえないかしら❤」


「私はコンビニでしてもらったみたいに、「あーん」って食べさせてもらいたいです」


 姫歌先輩に話を振られ、即答で返す。

 この話題が始まったときから、頭の中には先日のコンビニでの一件が浮かんでいた。

 先輩たちからは些細な反論もなく、一様に賛同の声が上がる。

 意見が一致したところで話は一段落し、姫歌先輩と葵先輩は作業を再開、アリス先輩は変わらず私の下着を嗅ぎ続け、真里亜先輩はキッチンに向かう。

 私はイヤホンを耳につけ、アリス先輩の歌ってみた動画を再生する。

 そして一人で密かに、先輩たちと口移しで食べさせ合う妄想を膨らませる。

 姫歌先輩、今回ばかりは少しだけ恨みますよ。

 魅力的な提案すぎて、頭から離れないじゃないですか!

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