16話 ヌードモデル
カーテンを閉め切り、唯一の出入り口である扉に鍵をかけ、テーブルを部屋の隅に寄せ。
創作部員一同は、産まれたままの姿を晒している。
当然ながら、五人そろって露出狂として覚醒したわけではない。
帰りにコンビニでちょっと高いアイスを奢るという条件で、葵先輩にヌードモデルを頼まれた。
デッサンする側の葵先輩まで裸なのは、一人だけ制服を着ているのはフェアじゃないから、という理由らしい。
四人を同時に描くわけじゃないから順番に脱げばいいんじゃないかとも思ったけど――
「一緒に裸になるなんて、いずれみんなでプールや温泉に行くときの予行練習になるわねぇ❤」
という一言により、私の単純な心はいとも容易く動かされた。
女同士で気心知れた仲ということもあって、驚くほどスムーズに話が進んでいまに至る。
「いや~、ほんとに助かるよ! バランスがいい悠理、爆乳の姫歌、ロリなアリス、グラビアモデル体型な真里亜! みんな違った魅力と特徴があるから、デッサンしたいって思ってたんだよね! 思い切って頼んでよかった!」
葵先輩は私たちから少し離れたところにイスを置き、スケッチブックと鉛筆を手に座っている。
その言葉には、一部を除いて激しく同感だ。
私の体はともかく、他のみんなは葵先輩も含め、魅力の塊としか言えない。
「うふふ❤ こうして近くで悠理の裸を見られるなんて、願ってもない幸運ね❤」
おっとりした雰囲気を損なわないまま、私のことを舐め回すように凝視する姫歌先輩。
彼女の芸術的なまでに美しい肢体を目の当たりにすれば、百合趣味じゃなくても同性ですら感嘆せずにはいられないだろう。
身長は私よりやや高い程度。
頭部よりも大きな乳房は、下着という支えなんて不要とばかりにツンと上を向き、そのハリツヤを主張している。
ちょっと動いただけで派手に揺れ弾む様は、まさに絶景だ。
「ゆ、悠理の、ぬ、脱ぎたてパンツと、く、靴下、はぁはぁ」
アリス先輩が左右それぞれの手に私の衣類を持ち、交互に香りを吸い込む。
制止の声をかけたいところだけど、年上とは思えない最高のつるぺたボディを拝ませてもらう代償と考えれば、これぐらい安いものだ。
どちらかと言えば犯罪行為に及んでいるのは先輩なのに、彼女の未成熟な肢体を眺める私こそが犯罪者なんじゃないかと感じてしまう。
「せっかく裸なんだから、悠理に本気で殴られたいわね。四つん這いになってお尻を叩かれるのもそそるわ」
穏やかじゃない発言に視線を移せば、そこには紛れもない女神がいた。
姫歌先輩に次ぐサイズを誇る巨乳は言わずもがな、キュッと引き締まった腰のラインや肉付きのいいお尻、ムチッとしていながらも一切の無駄を感じさせない太ももなど、あらゆるパーツがチートじみている。
出るところは出ていて、手足が長く、余計なところに脂肪が付いていない。
たとえ本人の希望であろうと、殴るのはもちろん気安く触れることすら恐れ多い。
「それじゃ、最初は悠理から描かせてもらうね~。斜めを向いて立って、上体をひねってこっちに視線ちょうだい。腕は後ろで組んでもらおうかな」
「は、はいっ」
葵先輩に呼ばれたことでハッと我に返り、指示に従う。
中学生のときに美術の授業でペアになって相手の顔を描くという経験はあるけど、本格的にデッサンの、しかもヌードモデルになるのは初めてだ。
裸になることも含めて緊張が拭えきれないものの、ポーズの説明が分かりやすくてホッとする。
とはいえ、葵先輩の体を正面から目の当たりにする高揚感だけはどうしようもない。
スケッチブックで隠れている場所もあるし、体型的には自分と最も近いはずなのに、引き締まりながらも女性的な丸みを帯びたボディラインには垂涎必至だ。
何度かポーズを変えて、最後に出来上がった絵を見せてもらって私の番は終了。
次に指名されたのは姫歌先輩で、やはりというか、まずはその爆乳を最大限に強調するポーズを要求されていた。
アリス先輩と真里亜先輩も、各々の特徴的な魅力が最大限発揮されるようなポーズ、イラストを描く際に細部が分かりづらいポーズなど、次々と指示を受ける。
一人あたり五枚ずつ、計二十枚ものデッサンをしたにもかかわらず、所要時間は決して長くなかった。
手早く描いたのだから出来が悪いかと言えば、断じて違う。
葵先輩の実力は充分に理解しているつもりだったけど、卓越した技術に改めて敬意を抱く。
「みんなありがと! 約束通り、帰りにアイス奢るよ! お小遣い少ないから、一人一つずつだけどね~」
服を着た後、テーブルやイスを元の位置に戻しつつ葵先輩が元気よく告げる。
「わたしの方こそ、お礼を言いたいわ❤ 貴重な体験をさせてもらったから、執筆に活かせそう❤」
姫歌先輩、葵先輩、アリス先輩、真里亜先輩。ジャンルは違えど、四人ともプロ顔負けの実力を持ちながら決して向上心を失わない。
セクハラ常習犯なところは除いて、心から尊敬できる。
ちなみに、先輩たちの裸はしっかりと網膜及び脳に焼き付けさせてもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます