第13話



 まずは作製可能なアイアンソードを製作する。

 アイアンソード、Sランクを作製したところで、それを取り出す。


 鞘に収まったその剣を手に持つ。

 中々良い剣だ……と思う。ランクが高いんだし、きっと良い剣だ。


 ……これに、スキルの付与ができるんだよな?

 どうやってスキルを付与するんだろうか。

 

 脳内でスキル付与に関して調べてみる。

 スキル付与はこの剣にこのままできるようだ。

 

 早速、筋力強化Sランクを付与してみようか。

 眼前にそれらの情報を映し出してみる。


 ……うんうん、なるほど。

 スキル付与を行おうと思ったが、そう単純な話ではないようだ。


 今俺が持っているアイアンソードには0/100という数字があった。

 スキルを付与する場合、この数字が増えていく。


 例えば、筋力強化Sランクを付与すると一気に50/100になった。

 たぶんだが、100を超えてスキルを付与することができないのだろう。


 これは武器によって違うのだろうか?

 試しにいくつかの装備を作製してみる。


 ……うん、結構違うな。初めはSランクの装備だからだと思っていたのだが、どうやらそういうわけでもないようだ。

 アイアンソードSランクがもう一本作れたので確認してみたが、そちらでは0/120という数字になっていた。


 良い武器の基準はこの数値の高さも影響してきそうだ。

 スキルに関して見ていたときだった。


 付与するランクを設定できるのがわかった。

 つまり、筋力強化SランクではなくAランクなどでも可能ということだ。


 これは筋力強化Sランクを手に入れたからだろうか?

 他のスキルを見てみても、同様にFからSランクまで付与することができるようだった。


 そして、Fランクのスキルとなれば随分と消費される数字は少なく済む。

 とはいえ、ランクが低くなればたぶん効果も弱くなるんじゃないだろうか?


 ランクが低くても使えるスキル、使えないスキルの見極めをしていくのが大事になりそうだな。

 

 早速装備を作製していく。

 まずはアイアンソードだ。Sランクが二つできたので、それにスキルを二つつけた。

 筋力強化Sランクと、自動帰還Sランクだ。


 装備はこんな感じでいいだろう。

 あとは余っていた魔石でアクセサリーを作製する。こちらには、筋力強化Sランクを二つつけてみた。

 

 これらのスキルは身に着けているだけで効果がある。少なくとも、それが冒険者たちの間の常識だ。


 装備とアクセサリーはそろった。

 そうなると、少し試してみたくなることがある。

 

 これらの装備で、本当に魔物と戦うことができるのかどうか、ということだ。

 明日は休日だ。


 なら、弱い魔物と戦闘を行う余裕くらいはあるかもしれない。

 試しにやってみようか。


 少しでも戦えれば、魔石集めくらいはできるかもしれない。

 魔石が増えれば新しい武器も作製できる。


 明日はゴブリンと戦ってみようか。



 〇



 次の日。俺は街の外へと出ていた。

 俺は十歳になったときに、身分証明として冒険者登録だけはしている。


 ギルドで依頼を受けることも考えたが、色々心配されるかもしれない。

 なので、一人で行動することにした。


 神託の儀を受けた後、職業や神器の更新も行っている。

 『鍛冶師』が戦えず、使えない職業ということは常識だ。

 そのとき、散々言われたので、あまりギルドに関わりたくない。


 街の外と中を繋ぐ門を守る騎士の横を過ぎていく。

 さすがに、視線が合ったくらいで職業がばれるということはないので止められなかった。


 とりあえず、ゴブリンを倒しに行こうか。

 戦闘に関しては、冒険者になるつもりだったこともあってそれなりにできる。


 これまで、ずっと体は鍛えているし、毎日宿屋で重労働もこなしている。

 今だって、休みの日には近くの道場に足を運んでいるくらいだ。


 街の外をしばらく歩いていく。

 やはり街近くには魔物が少ない。


 もう少し離れた場所まで向かう必要がある。

 街から随分と離れ、小さく見えるほどにまでなったところで、ゴブリンを発見した。


 俺は自分の作製した二つの剣に視線を向ける。

 魔物と戦ったことは何度かある。ゴブリンなら、これらの武器をもつ前から戦ってきている。


 問題なく戦える自信があった。


 鼻をひくつかせていたゴブリン一体に向けて、剣を思い切り投げつけた。

 真っすぐに飛んだ剣がゴブリンの左肩に突き刺さる。

 狙い通りだ。


「ぎぃ!?」


 ……意外とさっくり刺さったな。

 ゴブリンが悲鳴をあげ、周囲を睨みつけていた。


 俺に気づいたようだ。

 俺は持っていたもう一つの剣を投げつける。

 またも、ゴブリンに突き刺さり、ゴブリンがひるんだ。

 

 切れ味はかなり良いようだ。


 それに、普段よりずっと力が入る。

 これも、筋力強化の影響なのかもしれない。


 すでにゴブリンはかなりのダメージを受けたようで、膝をついている。

 それでも、さすがに野生の魔物だ。


 ゴブリンは俺へと向かって動きだそうとしたところで、自動帰還が発動する。

 二つの投擲した剣が俺の鞘へと瞬間移動するように戻ってきた。


 同時、ゴブリンの体から血が噴き出し、ゴブリンがその場で倒れた。

 まだ、生きてはいるようだ。

 なので、同じように剣を投げつける。


 完全に動かなくなったところで、俺は剣を鞘に戻した。

 ……うまくいったな。


 自動帰還のスキルは、うまく使えるんじゃないかと思ったが正解だったな。

 ただ、投擲を基本とするなら投げナイフのようなもっと軽いもののほうがいいかもしれない。


 確か作製できる武器には短剣もあったはずだ。

 今日はとにかく魔石を集め、短剣を作ろうか。

 俺は倒したゴブリンの体から魔石をとろうとしたところで、ふと思った。


 このゴブリンの体をハンマーで叩くとどうなるのだろうか。

 そんな興味本位で俺が取り出したハンマーを使って叩くと、その体が消滅した。


 ゴブリンの素材はどこにいったのだろうか。

 気になっていつもの製作画面を調べてみると、ゴブリンに関する装備品が追加されていた。

 必要素材が記載されていたが、その部分の数字も増えている。


 ゴブリンの牙、取り出せるのだろうか?

 意識してみると、手元にゴブリンの牙が現れた。

 先程まで血みどろだったのに、綺麗なものになっている。


 なるほど。部位ごとに解体しなくてもいいのか。

 これなら楽でいい。

 

 確か、両親も神器で解体していたはずだし、神器って便利だよなぁ。

 自分で解体するよりもずっと綺麗にできているしな。


「よし、この調子で魔物を倒していくか」


 魔物を倒せば熟練度も入るようだ。

 ただ、作製しているときに比べ、効率は悪い。


 ゴブリンが弱いのもあるかもしれない。

 このままレベルアップを繰り返していけば、もう少しくらいは強くなれるかもしれない。

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