~幕間~【ルシファー編】
神威は隊長室の机でルシファーが纏めた報告書を眺めていた。
「特に目新しい情報はないか…。
以前の任務でニアが見かけた記憶喪失の女性も未だ情報は無しと。」
神威はふぅと一息つくと首を鳴らした。
「やっぱデスクワークは肩凝るよな…。
リアルの世界でもパソコンと睨めっこは肩が凝ったからな。」
肩を回していると部屋にノックの音が響く。
「入れ。」
神威が声をかけると扉が開く。
「失礼します。」
ルシファーが深々と頭を下げ入ってきた。
「どうした?」
神威は何やら挙動不審なルシファーに声を掛ける。
「あの…宜しければ甘い物などいかがかと…。」
ルシファーはおずおずとクッキーの乗った皿を差し出す。
「クッキーか。
丁度、頭を使ったから甘い物が欲しかったんだ。
いただこう。」
神威はルシファーの差し出す皿から1枚のクッキーを拾い上げると口へ放り込む。
「サクサクで香ばしくて…。」
(しょっぱい!?)
神威の顔が青ざめる。
ルシファーが上目遣いに神威を覗き込む。
「あの…いかがでしょうか?
ジャンヌがお菓子作りが得意なので教えて貰って作ってみたのですが…。
やはり美味しくないですか?」
ルシファーの瞳が潤む。
(砂糖と塩を間違えたのか!?
そんなベタな…!!
しかし…俺の為に作ってくれた物を不味いとは…。)
「独特な味だな。
クッキーだから甘いと思っていたよ。」
神威は笑顔を作り遠回しに間違えていることを教えようとした。
「甘過ぎるのは好みがあると思いましたので、砂糖と塩を両方入れてみました!」
ルシファーの笑顔が眩しい。
(確信犯だ!!砂糖の甘さどこ??
塩のしょっぱさしかないよ!?)
「な…なるほど、俺の事を考えてくれたのだな。
ありがとうルシファー。」
(なんだ…後味に苦味が…。)
背中に汗が吹き出る。
神威はルシファーに悟らせぬ様に笑顔を見せる。
「沢山あるのでいっぱい食べて下さいね!」
ルシファーは更に皿を突き出し、万遍の笑みで神威を見つめた。
(何事もそつなくこなすルシファーにこんな弱点があったのか…。)
「そうだな。
では残りは作業をしながらいただくとしよう。
ありがとうルシファー。」
神威は皿を受け取り唾を飲んだ。
「はい!ではお皿は後で取りに参りますので。
失礼します。」
ルシファーは踵を返すと、御機嫌な様子で部屋を出ていった。
「さて…どうしようか…。
食べない…訳にはいかないよな…。」
俺は報告書を読みながらクッキーを食べてむせた。
次の日、頭に響く激痛と胃の痛みに苦しまされ、メフィストに胃薬を貰いに行った。
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