"トリガー オブ アヴァロン"~ガチャを引いてスキルを得たらチートレベルのキャラになって異世界召喚されたと思ったけど何かが違う!?~
狐塚 間介(キツネヅカ マスケ
【序章】
【オンライン配信サービス終了】
部屋で布団を被りボケーと天井を眺めていた。
「もう、死にたい…。」
そんな事を毎日呟くほど、俺は憂鬱だった。
俺の名前は"真宮 神威(まみや かむい)"俗に言うキラキラネームと言うやつだ。
実際には名前負けで散々虐められてきた。
仕事では怒られてばかり。
オマケに残業の嵐。
家に帰っても誰もいない。
学生時代も何度死のうと思ったか分からない程退屈だった。
社会にでて自分で稼ぐ様になってオンラインゲームにハマり、給料の支払いで必要な分以外は全て課金。
彼女いない歴=年齢。
ハッキリ言って見た目は自分的には悪くないと思っている。
告白された事もある。
でも、俺は【二次元の英雄】が好きなんだ!
それも美少女化された英雄が!!
画面の向こうで彼女達が苦難を乗り越えながら笑っている。
そんな笑顔が愛おしい。
なのに…なのに…!
何で、サービス終了なんだよ!!
俺が社会にでた時にちょうどリリースされたVRMMO【Q.E.D."TRIGGER"】
様々な歴史上の英雄、神話の神々。
ガチャ限で手に入る敵ユニットの悪魔、妖怪。
そんな美少女達の召喚者として隊長として皆を従え世界の崩壊、改変を防いでいくストーリー。
完結まで後少しだったのに…。
こんな中途半端な時期にサービス終了のお知らせなんて…。
『♪︎』
俺が布団に巻き付き悶えて居るとスマホの通知が鳴った。
「トリガーからか…。
サービス終了の時期が確定したのかな?」
俺は通知を確認する為にゲームを起動した。
ゴーグルギアを被りトリガーの世界にダイブした。
いつも通りのタイトル画面が表示されログイン認証を済まし、自軍の中にある隊長室にログインし降り立った。
机の上にはバインダーに挟まれたお知らせ通知が点滅している。
俺はバインダーに触れ、お知らせを確認した。
『いつもQ.E.D."TRIGGER"をお楽しみ頂き有難う御座います。
本日の午前0時を持ちまして配信サービス終了とさせて頂きます。
このお知らせは限定召喚に当選された隊長様にのみ送らせて頂いております。
つきまして、この度はサービス終了に伴い、最終召喚サービスを実施致します。』
「最終召喚サービス?」
『今までQ.E.D."TRIGGER"にて多額の課金購入をされた隊長様の中から抽選で10名様限定で最後の壊れ召喚と題しまして、スキルを5個まで御自身で選択して召喚できる特別ガチャを御用意致しました。』
「スキル5個自分で組み合わせて選べるとかマジで壊れてるな。」
『しかも、今回の最後の壊れ召喚で登場するキャラは隊長様御自身のキャラとなります。
今まではランダム召喚でしか入手出来なかった隊長アバターを御自身で選択し、スキルをはめ込み召喚する事ができます。
ですので、最後の一花を隊長様の手で仲間の姫達と前線に立ちお楽しみ下さい。』
「今までの隊長アバターに付いてるスキルは支援(サポート)スキルばかりだったから後衛で指示してるしか出来なかったけど、前衛スキルを付けれるなら、前線にも行けるのか…。
マジで壊れだ。
なんかこんだけ壊れ設定くると終わるのを実感するな…。
んでそのガチャは…?これか。」
画面をスクロールしガチャ画面を開く。
「まずはアバターを選ぶのか…。
持ってないレジェンドレアのアバターは…っと…。
おぉ!配信開始直後の限定ガチャでしか手に入らなかった、"聖魔極し騎士の証"があるじゃん!このハーフマント以外は持ってるけど、このマントだけ幾ら突っ込んでも出なかったんだよなぁ…。
しかも、再登場は無かったから手に入らない幻のアバター…よし!これにしよう!」
アバター確定ボタンを押す。
画面はスキル選択画面に切り替わった。
「スキルの組み合わせはどうするかなぁ…支援スキルはほぼ持ってるから選ぶなら持ってない前衛スキルだよなぁ…。」
スキル一覧を確認していたら気になるスキルに目をとめた。
「なんだこのスキル。見た事ないスキルだ。
"絶対なる創造主(アブソリュート クリエイター)"か…。
スキル効果は…空白かよ…。
実装されてないスキルのミス配置かな?とりあえず他のスキルを探すか…。」
スキル一覧から持っていない前衛スキルを選択していく。
「何だかんだ持ってたなぁ。
姫達に持たせてるスキルもあるし、俺個人で持つなら支援スキルより自身のステアップの常時発動系だよな…。
"究極剣聖(アルテミット セイバー)"と"不可侵領域(インヴィオラビリティ フィールド)"か…後は魔法系も欲しいかな?"無限体魔力(インフィニティ ヒール)"と"究極魔導士(アルテミット ウィザード)"か…。
後一つ、何にしようかな。」
スキル一覧をスクロールしながらさっきのスキルが頭から離れない。
「絶対なる創造主か…まぁ他の4つが有れば無敵だし、ハズレスキルでもいいか!一つくらい遊んでみるか!」
絶対なる創造主をスキルリストに入れて確定ボタンを押す。
画面は召喚室の画面に切り替わる。
「さて。最後の召喚だ。
華々しく行こうか!」
そう言うと召喚の儀式という名のガチャを引いた。
隊長のアバター召喚と言う事で装着しないといけないので、魔法陣の中央に立ち、召喚を始めた。
「今まで頑張って来たのになぁ…もう少しで姫達ともお別れかぁ…この装備で姫達と肩を並べて戦えるならまぁ最後の思い出にはなるか…。」
目を閉じ召喚の儀式が始まった。
召喚のエフェクトが身体を包み込む。
左肩に光が集まる。
夢にまで見た幻のアバター"聖魔極し騎士の証"が装着されて行く。
「おぉ…!」
余りの嬉しさに思わず声が漏れた。
召喚の儀式が終了し左肩にはマントがはためいていた。
「さて。
このほぼチートな俺の能力で最後の戦いに行くかな!」
召喚室をでて姫の待機ルームに向かった。
姫とは自分が隊長となり、トリガーの世界で共に戦うNPCの呼び名だ。
「なんのクエストをやるかな。
ん?最終日限定"最高難易度クエスト"か。これでいいか。
パートナーとなる姫と2人だけでクリアしないといけないクエストか。
誰を連れてくかな…。」
クエストを受領して姫を選ぶ。
「やっぱ最後のクエストなら最初に一目惚れして仲間にした姫を連れてくかな!」
姫一覧の中から金髪の少女を選択した。
しばらくすると金髪の少女が駆け寄ってきた。
「隊長!お待たせしました!さぁ行きましょう!私は何処へでもお供します!」
眩しい笑顔を俺に向ける。
(この笑顔に惚れた!俺が求めた究極の癒し!)
俺は歓喜に震えた。
彼女はアーサー。
よく、漫画やゲームに登場する英雄。
このトリガーにも初期から登場するキャラクターだ。
彼女の笑顔に一目惚れして俺はこのゲームにハマった。
彼女を最高ランクまで育てるのにいくら使ったか…。
おかげで俺自身も最高ランクまできている。
トリガーの世界ではそれなりに有名なランカーだ。
イベントでは必ず1位、2位に名を残していた。
「よし。
行くのはこのクエストだ。
今日は俺も前線に立つ。行くぞ!」
クエストを受注してフィールドに向かった。
初期フィールドの外れにある限定クエスト専用マップ。
道中の敵は俺とアーサーにしてみれば雑魚ばかり。
軽く剣を振れば消滅する。
クエスト受注者にしか通れないルートを通り辿り着いた。
「ここが限定クエスト専用マップか。
いかにも最後のダンジョンって感じだな。」
目の前には魔王の城と呼ぶべき様な禍々しい城が建っていた。
「隊長!準備はいいですか?」
アーサーがマップ侵入の選択肢を表示する。
「YESだ。
行くぞ!」
俺は迷わずYESを選択して重々しい音を立てながら開く扉の中に入って行った。
中は薄暗く不気味な雰囲気が漂っていた。
豪華な装飾なのに朽ちていたり、何処からともなく魔物の声が聞こえたり。
「いいね。
ゾクゾクする!こう言うマップは大好きだ。」
俺とアーサーは周りを警戒しながら先に進んで行く。
アーサーはいつも通り、アーサー専用武器"エクスカリバー"を振り回し敵を倒していく。
俺は究極剣聖で全ての剣技スキルを使える様になっている為、最大威力の剣技を連発して敵の群れを一掃する。
剣技スキルはHPを消費して発動するのだが、無限体魔力で自動回復している為、直ぐに回復した。
究極魔導士で使う魔法も同様にMP消費しても回復する。
不意の攻撃を受けても不可侵領域によって自分の攻撃力+防御力以下の攻撃ダメージは無効化できる。
仮に無効化出来ず受けたとしても一桁台のダメージの為、自動回復で無傷と変わらない。
今の俺の攻撃力と防御力なら無効化出来ない攻撃など無いけどな。
俺は無双していた。群がる敵を薙ぎ払いどんどん進んで行った。
「ここが最終フロアか?」
いかにもボス部屋と言う感じの玉座の間だ。
アーサーは最高ランクと言えど少しは手こずっていたみたいで髪が乱れたり、小さな傷が出来ていた。
「ボス戦前に回復は常識だな。
"完全完治(パーフェクト ヒール)"」
俺はアーサーを魔法で回復させた。
「隊長、ありがとうございます!いよいよボス戦ですね!でも、どんなモンスターが来ようと隊長と私の敵ではありません!」
アーサーがこちらに笑顔を向ける。
クエスト専用ボイスか?
何だか嬉しい。いやかなり嬉しい。
「よし。行くぞ!」
玉座の間を進み、玉座の前に歩み出た。
「よく来たな英雄よ。
我の名は"ルシフェル"魔界を統べる王なり。」
玉座に座るルシフェルから12枚の黒い天使の羽根が広がる。
「我を倒さんとする者よ。
汝の名を名乗る事を許そう。」
「俺の名前は"神威"!神の威を狩る者だ!」
俺とアーサーは剣を抜いた。
ルシフェルは最強ランクのモンスターだろう。
今までのクエストでは黒幕的扱いで戦闘イベントは無かったから、戦う事は無かった。
始めての敵にワクワクしていた。
「神威か…覚えておこう。
さぁ!我に挑むがいい!汝の無力を思い知れ!」
ルシフェルが立ち上がり戦闘が始まった。
俺は究極剣聖でスキルを叩き込んでいく。
アーサーもエクスカリバーを振り回し攻撃していく。
しかし、ルシフェルのHPが減らない。
少し減っては回復していく。
俺のHPも減らない。
ルシフェルの攻撃は無効化されている。
「こんなん倒しようがないだろ…運営め…最後にやらかしてくれたな…。」
俺はボヤきながら攻撃を続けている。
アーサーは傷つき次第にHPが少なくなっていく。
「完全完治!」
俺はアーサーのHPを確認しながら回復させた。
そんな感じで暫く戦闘が続いていた。
「キリがねぇ…。」
俺とルシフェルは無傷で戦いを続けていた。
すると、スキルアイコンが光りだした。
(何か時限スキルセットしてあったっけ?)
アイコンをタップすると
【絶対なる創造主】
のスキルが点滅していた。
「この戦闘で発動する隠しスキルだったのか?」
俺は絶対なる創造主を発動した。
俺の身体が光り出す。
光はどんどん強くなり部屋一面を白く照らした。
「その光は!あぁぁぁぁぁぁ…!」
ルシフェルから特殊ボイスが流れ、ルシフェルの羽根が白くなっていく。
(やっぱり専用スキルか。
これが無かったらルシフェルを倒せなかったのか。)
ルシフェルの羽根が純白に変わり床に倒れた。
俺の目の前には【Quest Clear】の文字が浮かび上がった。
「ふぅ。これで終わりか…。
何だか呆気なかったな。」
クエスト報酬を確認すると特別報酬が入っていた。
「"Exスキル 解放への階段"?始めて見るな。
スキル効果は…これも空白か。
最後の思い出スキルかな?さて。
終了まで時間もないし、自軍に戻って姫達を最後に眺めるか。」
俺は転移のスキルを発動させようとしたらルシフェルが起き上がり此方に歩いてきた。
「神威よ。
私は"ルシファー"汝の導き手として力を委ねます。」
ルシフェルはルシファーとなって俺の召喚書に吸い込まれて行った。
(ガチャでもないのに、敵キャラが仲間になった?!しかもラスボスだろ?最後だからって運営やりすぎじゃね?)
俺は頭をかきながら自軍に転移した。
自軍に戻り隊長室に入って椅子に座った。
目の前には、アーサーとルシファーが此方を見つめ立っている。
隊長室には姫を2人まで配置できる。
折角、ラスボスを仲間に出来たんだからと召喚してアーサーと並ばせた。
「後、数分で終わりか…。」
しみじみと今までの事を思い出した。
「楽しかったな…。
最近はフレンド達もリアルが忙しくてインしなくなったからな…。
はぁ…明日は仕事か。
サーバーダウンしたら寝るか。」
俺は目を閉じカウントダウンを見ていた。
なんだか眠くなってきた。
残り数秒なんだけど意識がぼやける。
【Exスキル 解放への階段を使用しますか?】
無意識にYESの選択を押す。
俺はサービス終了と共にログアウトする。
はずだった。
身体に違和感を感じ俺は目を開けた。
目の前には部屋の天井が広がっているはずなのに、未だゲームの世界に居た。
(あれ?サーバーダウンしてない。
サービス終了が延期になったのか?)
俺はバインダーに目をやりお知らせを開こうと触れた。
しかし、画面は表示されず指には紙の感触。
(紙の感触?どういう事だ?!)
俺はバインダーを持ち上げた。
(重量がある。
感触は完全に木のバインダーと紙の感触。)
俺は周りを見渡した。
机の向こうにはルシファーとアーサーが立っている。
「隊長どうしました?」
アーサーが不思議そうに此方を見つめた。
「きっとお疲れなのですよ。」
ルシファーも此方を見つめていた。
(自発的に話してる?特別会話か?運営に確認しようにもアイコンも表示されないし…。
流行りの異世界転移か?んなわけあるか。
漫画やゲームの世界じゃあるまいし…でも…。)
俺は立ち上がり部屋の中を歩き回る。
(今まで触れなかったオブジェクトにも触れられる…て事は…。)
俺は恐る恐るアーサーの髪に触れた。
「どうしました隊長?くすぐったいですよぉ♪︎」
アーサーは顔を赤らめる。
(可愛いなぁ♪︎じゃなくて!倫理コードがでない?!それにアーサーの息遣いまで感じる…。
これは…マジで異世界転移か!?)
俺は慌てて触れてた手を離した。
「隊長。
今日はおやすみになられては?なにやらお疲れの様子ですので…。」
ルシファーが心配そうな表情で俺の顔を覗き込む。
「そっ…そうだな!じゃぁ今日はご苦労だった!解散して各自休養してくれ!」
そう言うと俺は椅子に座った。
「では失礼致します。」
ルシファーは深々と頭を下げると隊長室を出ていく。
「じゃぁ隊長!おやすみなさい!」
アーサーは手を振りながら隊長室から出ていった。
「マジかよ…俺…どうなったんだよ…。」
俺は机に突っ伏して項垂れた。
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