14話 あの日の答え

アルストロメリアの《世界つむぎ》で元の世界に帰る。マリーがメイド達と過ごした元の世界だ。


「んじゃあ、オレはここで行くとしよう」


王宮の門前でアルストロメリアはお別れを言う。


「なんで?一緒に来てよ」


「オレは世界に愛されてねぇんだよ。そう言う性分だと思ってくれ」


《世界つむぎ》によって、様々な世界、様々な時間を渡れるアルストロメリアにとって、一つの世界に留まるという。その世界に対する愛着心は、とうの昔になくなっていたのだ。


アルストロメリアはそういうと《世界つむぎ》によりどこかの世界に行ってしまった。別れの最後に彼女はこう言った。


「まあ、用が合ったら呼んでくれや。その妹なんだし、助けになるぜ。お、お姉ちゃん……」



マリーは王宮に帰ると暫くぶりのメイドたちと再会した。


「あら、マリー様。今日はお早いのですね。まあ!そのティアラ!お可愛いこと!」


マリーのその頭には王たる証の黄金のティアラがあった。それはアマリリスの想いの詰まったティアラである。


「いいでしょ!どうよ、お姫様らしくなったでしょ!」


その誇らしげ言うその姿はどこかアマリリスを連想させた。


いつもの俗事のルートを辿って床に就く。


「明日は玉座の方に行ってみようかしら?座ってみたかったのよね。玉座」


なんて浮かれているとドタドタと騒がしい音が聞こえてきた。


「何かあったのかしら?」


――はて、今日は何日だっけか。


いつもは図書館に行っていたマリーはアルストロメリアのきまぐれによりこの日に飛ばされたのだ。


「嫌な、予感……」


そう呟くと、ゆっくりと自室の扉が開けられた。

そこに立ってるのは自分。

あのとき、図書館から帰ってきた自分である。


「あの――」


そのもう一人のマリーが床に就いたマリーに話しかけようとすると、もう一人のマリーは水面のように波打つともやになって消えていった。


「そうか。あの時みたのは、確かに私だったか。てか、これ全部アルストロメリアのせいだからね!あとで絶対叱るんだから!」


《不当なる観測者の権限》、もとはアマリリスが世界を跨またぐために創った《想いの力》であったが、〈本人の意思に関係なく勝手に〉世界を跨またいでしまう力になっていた。


もう一人のマリーが消えていったのはこの力のせいである。


床に就いたマリーはメイドに説明するのが面倒になったいたのでそのまま眠る。


久々にフカフカの布団に包まれると泥のように眠るのであった。

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