第39話:驚天動地
エルフ族と獣人族、両陣営から地を揺るがすような
クソ、このままだとここが戦場になっちまう!
しかし俺はまだ身を起こすのがやっとだ。
それでもここで今までの努力を無駄にするわけにはいかない。
俺はカーリンさんからもらった
不味さに気が遠くなりそうになりながら飲み下す。
これで足止めをするくらいならできるはずだ!
「お前ら、待て…」
立ち上がろうとした時、突然足下が揺れた。
まだダメージが抜けきってないのか?
いや、見渡すと他のみんなも驚いたように辺りを見ている。
ひょっとして地震なのか?
しかも揺れは止まることがなく、それどころか次第に大きくなっていく。
「な、なんだ?この揺れは?」
「まさか、御巴蛇様がお怒りになられたのでは!?」
「聖地で争いをしたから御巴蛇様様の怒りに触れたんだ!」
周囲はパニックに陥り、戦争どころではなくなっていた。
これは本当にウズナの仕業なのか?
大地の揺れはやがて立っていられないほどに大きくなっていった。
「バ、バルド殿!これはどうしたことだ!」
「御巴蛇様がお怒りになられたのだ!こんなところで戦を起こそうとするからだ!」
「お助けください!お助けください!お助けください!お助けください!」
「もう戦はしません!どうかお許しを!」
みんな地面に膝をつき、頭を手で抱えて声も避けよと助けと許しの言葉を叫んでいた。
「おい!あれを見ろ!」
大きくなる揺れの中で俺は山に異変が起きたのを感じた。
「な、なんだ…あれは…!」
「山が…山が割れていくぞ!」
その言葉の通り、山に大きな亀裂が走っていた。
やがてその亀裂は
「御巴蛇様がお目覚めになるのだ!」
「駄目だ!もう我々はお終いだ!」
絶望の叫びが辺りを覆いつくす。
本当に
「あ、あれを見ろ!」
誰かが蛇頭窟を指差した。
そこに見えたのは…蛇頭窟から抜け出ようとしている巨大な蛇の頭部だった。
頭だけでちょっとしたビルほどの大きさがある。
全員がその姿を見て静まり返った。
先ほどまでの騒ぎはぴたりと止み、沈黙が辺りを包み込む。
蛇の瞳がこちらを見た。
それだけで数百名の兵士が気絶して倒れた。
俺の頭の中にはルスドールやリオイの言葉が浮かんでいた。
そこでハッと気づいた。
まさか
あれだけの量の水が一気に流れ出したら…
俺の頭から音を立てて血の気が引いていく。
「ま、待ってくれ…!」
慌てて駆け寄ろうとしたが足下がおぼつかない。
そうしている間にもウズナはずるずると前に這い出していた。
他のみんなはただ黙って見ているだけだ。
あまりのスケールのでかさに逃げ出すことすらできないでいる。
蛇に睨まれた蛙どころじゃない、
俺たちが見守る中ウズナは前進を続けていき、やがてその全身が山から抜け出した。
それはまさに天を突くような圧倒的な姿だった。
真っ黒な全身に虹色の紋様が煌めくその姿は畏れよりも荘厳さすら漂わせていて、神と敬われるのも納得の威容だ。
俺はその姿を見て死を覚悟した。
いずれ時を置かずして
それも仕方ないことなのかもしれない。
…
……
…………
しかしその時はなかなか来なかった。
山が…崩れない?
「まったく騒々しい奴らじゃ。落ち着いて脱皮もできんではないか」
ウズナの声が響いてきた。
脱皮?今脱皮といったのか?
「ようやく酔いが醒めたから脱皮の気分になったというのに…おお、テツヤか、先ほどは世話になったのう」
ウズナが俺に気付いて鎌首を近づけてきた。
「どうじゃ?我の新たな鱗は?美しいであろう?」
「え、ええ…」
あまりの迫力に言葉が出てこない。
その時、俺はウズナの大きさが
巨大さに圧倒されていたけど改めて見るとウズナの大きさは
「…思ったよりも小さいんですね」
「第一声がそれかえ。まあよいがの。我ら
だから山が崩れなかったか?
おそらく脱皮した皮や長年の堆積物が山としての構造を維持できるくらいの強度を持っているのだろう。
ともあれ俺たちは助かったらしい。
俺は密かに胸をなでおろした。
とは言えウズナの体長は一キロメートル以上はありそうだ。
今はとぐろを巻いているけどその姿は
「で、こ奴らはなんじゃ」
ウズナがドミウムとスマトーの軍隊に目をやった。
「「ひっ」」
それだけで全員が腰を抜かして地面にへたり込んだ。
ドミウムもスマトーも真っ青な顔でガタガタ震えている。
「実は…」
俺はウズナにエルフ族と獣人族のいきさつを簡単に話した。
「なるほどの」
話し終えるとウズナが理解したと言うように舌を出した。
「そこに居並ぶ者ども、よく聞くのだ」
ウズナの声が響き渡った。
「「「「はひいいいっ」」」」
その声に全員が一斉にひれ伏す。
ウズナの持つ迫力に完全に圧倒されていた。
ウズナが言葉を続けた。
「今後はこのテツヤをこの地における我の代理者と定める」
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