第37話:リンネ姫を追え!
ノーセスの警告と同時に広間の扉が弾け飛ぶように破壊されて
「クソ!こんなことに手間取ってる場合じゃないってのに!」
俺は床に手をついた。
ワンドが消えたからなのだろうか、俺の力も戻っていた。
「ぬああああああああっ!!!!」
意識を屋敷全体に広げてその構造を一気に変える!
まず門という門を全て閉じ、次に屋敷の石壁を操作して完全に入り口を塞いだ。
更に石壁や床の石畳を操作して屋敷を全く入り口のないドーム状に変える。
これなら外部の
「外部は全て塞いだ!みんなは残りの
「「「了解した!!!」」」
俺の言葉にみんなが一斉に戦闘態勢を取る。
「ノーセス!屋敷内の
「二千…二千五百体くらいです!」
護衛隊長セレンの言葉にノーセスが答える。
くそ、こっちは二十人足らずだってのに。
今は広間の入り口を封鎖しているけど二千五百体のグールの圧力がかかればいずれ破られてしまうだろう。
いや、その前にリンネ姫を探さないと。
しかし何度屋敷をスキャンしてもリンネ姫の気配は追えない。
この屋敷に地下室はないみたいだから絶対に地上のどこかにいるはずなんだが……
…待て、なんでこの屋敷には地下室がないんだ?
どんなに地下をスキャンしても何も感じない。
というか、なんで地中の構造すら返ってこない?
「はい、どーーーーーーんっ!!!」
いきなり頭上から声がしたかと思うと俺のすぐそばに人影が降ってきた。
いや、人影だけじゃない、巨大なハンマーもだ。
ハンマーの一撃で足元の床が粉砕され、もうもうと土煙が舞った。
「あちゃー、外しちゃったよ」
立ち込める土煙の中から聞き覚えのある声がした。
「リュース!なんでこんなところにいるんだ!?」
「へろー。やっぱりテツヤに会いたいから来ちゃった♥」
リュースはそう言って舌を出した。
クソ、
「あれ、ひょっとして壊しちゃったかな?」
リュースはそんな俺などお構いなしで床をトントンと蹴っている。
そこはさっきの一撃で床の石板が砕け散り、下に真っ黒な空間が覗いていた。
「下まで抜けちゃったかな?」
リュースはのんきにそんなことを言っているけど俺の意識は別のところにあった。
なんで地下に空間がある?この屋敷に地下室はなかったはずなんじゃ?
その瞬間、俺の頭の中に屋敷の地下室の構造が流れ込んできた。
いや、地下室なんてもんじゃない、これは…上下逆さまにしたこの屋敷の構造そのままだ。
改めて床を見ると巨大な魔法陣が描かれているのがわかった。
おそらく今まで魔術的に隠されていたのがリュースの一撃で床ごと破壊されたのだろう。
地下の存在を隠匿し、隠匿するための魔法陣すらも隠匿されていたのが今では完全に把握できるようになっていた。
この屋敷は逆になったもう一つの屋敷があったんだ!
そしてその逆屋敷の最奥、本来の屋敷の最上部にあたる場所に……リンネ姫がいる!
「リンネ姫が見つかったぞ!」
「本当か!」
俺の叫びにみんなが一斉に色めき立った。
まだ安心はできないけど少なくともこれでリンネ姫を追いかけられる!
しかしリュースの攻撃が無かったらこんなに早くわからなかったかもしれない。
……まさか、リュースはこのことを分かって…?
「いやいや、テツヤを攻撃しようとしたのに外しちゃったダケダヨ?」
リュースはとぼけた顔をしている。
相変わらず何を考えているのかはわからない、それでも俺が今すぐ行くべき場所はわかった。
その時、封印していた扉が破られた。
凄まじい数の
クソ、早いところリンネ姫を追いかけなくちゃいけないのに!
焦る俺の目の前に一筋の光が閃き、目の前の
護衛隊長のセレンだ。
両手に持った双剣で
黒い鎧で縦横無尽に戦うその姿はまるで黒い竜巻だ。
「行け!テツヤ!リンネ姫をお救いしてくれ!」
セレンが剣を振るいながら叫んだ。
「その通りだ!」
背後で声がした。
いつの間にか背中にはアマーリアがついていた。
「ここは私たちに任せておけ!」
アマーリアが龍牙刀を振う度に
「テツヤ、リンネ姫様を助けに行ってくれ!」
上空から声がしたかと思うと
「これしきの
弓から放たれた無数の矢が
「行って、テツヤ」
フラムがかざした手から熱線が迸り、
護衛隊もグランの兵隊たちもみんな獅子奮迅の働きをしている。
「すまない、みんな!」
俺はリュースが開けた穴の中に飛び込んだ。
「リンネ姫は絶対に助ける!」
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