ファントム・キャリッジ

夏川冬道

1.モーター・ゾク

『アルテミスハイウェイのアーバンレジェンド:ファントム・キャリッジ! 悪夢じみたスピードデーモンの存在がモーター・ゾクをルナティック・ランに駆り立てる!』


「何がスピードデーモンだ! ナメ腐りやがって!」


 トビカワはタブロイド紙を丸めて投げつけた。元タブロイド紙、現紙屑はブルータル・ベルセルク・ゾクのアジトの窓ガラスに衝突し跳ね返り、薄暗いコンクリート床に落ちた。

 リーゼント、革ジャン、サングラスのクラシカル・バイカー・スタイルのトビカワはスカムタブロイドに対する怒りに満ち溢れた表情で立ち上がり、無造作に段ボールを蹴りつけた。段ボールは少しへこんだ。


「トビカワの兄貴、どうしたんでやんすか?」とチビでバンダナのモーター・ゾクがトビカワにこびへつらうような顔で見上げていた。


「どうしたもこうしたもあるか! スカムタブロイドのゴミカス野郎がゴミカス書きやがって! ダチ公が5人死んだんだぞ! スカムアーバンレジェンドに殺されたんだ!」

「昨夜から1人増えたでやんすか?」

「あぁ、ジンヌマの野郎が今朝あっけなくお陀仏しやがって、あいつはいい奴だったのに!」


 トビカワは涙をにじませながらバンダナにファントム・キャリッジに対する敵意に満ちた視線で訴えかける。

「あいつらに俺たちブルータル・ベルセルク・ゾクできることはナメ腐ったファントム・キャリッジ野郎の化けの皮を剥がすことだ! それがあいつらにできる最高の供養だ!」

「でもファントム・キャリッジは降霊術で動いているでやんすよ?モンスターと同じでやんす。そんな相手に本当に勝てると思うでやんすか?」

「俺はオカルティズムを信用しない。イカレたサディストのハッカーの仕業に決まっている! 奴を吊るして引きずればいいんだよ! そんなこともわからないのか! このゴミカスが!」


 そう叫ぶと、トビカワはバンダナをビンタした!

 痛みと共にバンダナは理解した。トビカワは本気だ。トビカワは本気でファントム・キャリッジと狩ろうとしているということを。

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