王冠花くじらのお姫さま

姫宮未調

イタヅラ好きのお姫さま

とある国に、イタヅラ好きのお姫さまがいました。

庭師のおじいさんの剪定バサミを埋めたり、メイドの竹ぼうきを隠したり。

使用人たちは呆れかえり、次第にお姫さまの相手をしなくなりました。

元々、使用人たちにお姫さまを相手にしている余裕がなかったのです。

5歳を間近に控えたお姫さまの気持ちに誰も気がつきません。

それには理由がありました。

3年前、お姫さまの弟である王子さまが、1歳を迎える前に病気で死んでしまったのです。

戦争好きの王さまは跡継ぎがいなくなり、お姫さまに見向きもしなくなりました。

王妃さまは王子さまを失ったショックで心を病んでしまい、お姫さまを見なくなりました。

お姫さまは愛されたかっただけなのに、王子さまを失うと同時に、すべてを失ったのです。

剪定バサミを埋めたり、竹ぼうきを隠したのは、少しでも誰かとお話がしたかったのです。

ただ話し掛けても、無視されたり、あしらわれてしまう日々。

涙を流しても、誰もお姫さまを見てくれません。

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