518.【後日談5】憎しみと愛の献身 その1
昼の雑貨屋クローバー前。
俺は猫トラから商品を受け取り、今ちょうど倉庫に運び終わった。
ところで、猫というものは飛んでいるハエやガを見ると、尻尾をブンブンと振りながら、飛びつくものだ。
それは、大きいネコ科魔獣にとっても変わらない。
例えば大型魔獣の猫トラの真上にドラゴンが飛んでいたら、
「ケケケケケケ……(狙ってー、狙ってー……)」
「キュオオオオン!(不思議猫よ、先ほど老婆達が森からどこかに出かけていったのであr)」
「ぬあー(とう!)」
「キュオン!(ギャァァアアアーー!!!?)」
ガブリ! ケリケリケリ!
猫トラは赤い竜フランベルジュの首に噛みつき、前足の爪でしっかりフランベルジュを固定し、連続キックをお見舞いする。
フランベルジュは気絶してしまった。
「ぬー(ふぅ。肉球魔王様、このドラゴンのお肉、買い取ってー)」
「にゃー(残念ながら、それは俺の知り合いだ)」
「ぬあ?(そうなの? 残念)」
フランベルジュは白目を
さっき何か言いかけてたな。
シルフ婆さん達が出かけたのかな。
猫像モニターをチェックする。
どうやらシルフ婆さんとアウレネ、オリバーが蛇のチロチロに乗って、獣人国に行ったらしい。
確か戦争で人間国に負けて奴隷国にされていたんだっけか。
シルフ婆さん的には獣人がどうなろうと興味ないのだが、その獣人国にはエルフの集落も存在する。
エルフの集落に被害が及ぶ前に、この国へ移住しないかと提案するつもりなのだろう。
ま、俺には関係の無い話だ。
「みゅ~(アウレネに置いていかれたにゃ~酷いにゃ~)」
「にゃー(そりゃお前、連れて行っても邪魔になるだけだし)」
白猫リリーが雑貨屋クローバーにやって来て、俺に愚痴る。
「みゅ~(こうなったら、やけ食いしてやるにゃ。臓物ピザ1つにゃ)」
「ぬう(臓物ピザ? 何それ!)」
「にゃー(1週間前から開始した新メニューだ。今、用意してやるぞ)」
四次元空間から材料を取り出し、切って、乗せて、
リリーと猫トラに振舞ってやった。
そして猫トラは臓物ピザにハマり、週に1回は頼みにくるようになったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
・錬金術師アレクサンドラ視点
地下調査をしている際にたまたま発見した、【隠ぺい】スキルのかかった土。
その土は、まるで何かを誰かから隠しているかのように、地下深くに広がっていた。
俺はその調査のために、ゴーレムを引き連れ、地下深くを掘っている。
【ライト】のスキルで、自分たちの周りを照らしつつ。
今のところ何も見つかっていない。
この辺に、何かあるはずだのだけど。
単調作業なので、地上の様子を宙に映したものを見ながら作業している。
どうやらフランベルジュが猫トラにノックアウトされたらしい。
ざーこ。
そういえば、フランベルジュは神の使いだったっけ。
世界には、神の使いと言われている存在がいる。
人間や獣人、時には魔獣とともに国を作り、国を繁栄させよ、と神に命じられ、この世界に生まれた存在が。
例えばこの国、魔獣国チザン。
国王の嫁の魔獣ファルチザンも、神の使いだ。
神の使いには寿命が無い代わりに、国が滅ぶと、神の元へと
だけど、ここで矛盾点が1つ。
フランベルジュは、フランベル国が滅びたにも関わらず、神の元へと還っていない。
(※アレックス君は知りませんが、厳密にはフランベルジュは1回命君のダンジョンで死んで蘇ってます。
その時に神の使いから解放されました。フランベルジュはもはやただのトカゲです)
これはどういうことだろうか。
そもそも国が滅ぶとはどういうことか。
国というものは物理的には存在せず、皆が心の中で認識している存在に過ぎない。
そこで1つの仮説が立つ。
フランベル国、滅んだと認定されていないのではないか?
その仮説が正しければ、どこかに、フランベル国が未だに存在している、と信じている者が居る。
猫さんや、猫さん周りの住人ではない。
では誰か。
フランベル国が存在している頃から居て、未だに死にきれずに生きている者は、いったい誰か。
思い当たる人物が、たった2人だけ居る。
俺の時代に、魔女とか夜の帝王とか色々言われた2人が。
ボコッ! ゴーレムが何か掘り当てたようだ。
掘った穴の奥には、空間が広がっていた。
もしかするとこの先に、彼女達が居るのだろうか。
空間を照らすと、石で出来た巨大な都市と水路、そして大量の動く骸骨が見えた。
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