419.【後日談3】ぎゅむ


翌日。

ここは大魔導師の森、アウレネ宅。


最近思うんだ。俺って働きすぎじゃね?


体は元気なのだが、心が疲弊している。

これは癒しが必要だ。


というわけで、リリーのモフモフボディに顔を突っ込む。

う~ん、干した布団の香り。



「みゅ~(暑苦しいにゃ! 近寄るんじゃないにゃ!)」



ぎゅむ。

リリーは前足で俺の顔を押しのける。

酷いや。



「にゃんこさん、こっちに来て一緒に昼寝しましょ~」


「にゃー(やだ)」



アウレネは必要以上にベタベタ触るから、近寄りたくないのだ。


まぁ仕方ないな、アウレネで我慢してやるか。


俺は『触るなよ! 絶対に触るなよ!』とエメラルド板に刻み、アウレネのベッドに潜る。



「わ~い」


「にゃー(触るなって言ってるだろ)」



ぎゅむ。

アウレネの顔を前足で押しのける。



「5分だけ、5分だけでいいですから~。

あ~ん、にゃんこさ~ん」



やっぱアウレネと寝るのは無しだな。

俺はベッドから出た。



「しょうがない、リリーちゃん、モフらせてください~」


「みゅ~(だが断るにゃ!)」


「ふがっ」



ぎゅむ。

リリーに前足で顔を押しのけられている。


リリーは今は一人でのんびりしたい心境なのだ。

あまり構うと嫌われるぞ。


俺はアウレネ宅を後にした。



◇ ◇ ◇ ◇



雑貨屋クローバーにて。

俺はお昼寝のために、アザラシ型のぬいぐるみクッションを取り出し、その上に乗っかる。

ふかふかだぜ。



「にゃ~ん(肉球魔王様、よろしいでしょうか)」


「にゃー(何だ)」



ホムンクルスのニボシ君が話しかけてきた。

まだ昼だから店番には早いはずだが。



「にゃ~お~(夜の店番が暇で暇で仕方がないので、雑貨屋クローバーの名前を広めるための活動をしてもよろしいでしょうか?)」


「にゃー(好きにしたらいいぞ)」



俺は半分寝ていたので、適当に返事をした。

彼がわざと曖昧な言い方をした理由を考えもせずに。



◇ ◇ ◇ ◇



・トミタの四次元空間ホムンクルス置き場にて



「にゃ~ん(肉球魔王様の許可を頂いたぞー!)」


「よーし! 目星をつけておいた土地を購入するでふー!)」


「パオーーン!(建物は既に用意してあるっしゅ。土地を用意次第、立てるっしゅ!)」



ホムンクルス達の野望、それは肉球魔王様の功績を世界中に知らしめること。


その足がかりとして、まずは雑貨屋クローバーの支店を世界中に広めることにした。


無害な活動だったため肉球魔王様は気づかず、知らぬ間に各国に10以上の支店が出来ていた。

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