388.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】猫さんは廊下で横になりたい


・鑑定神ソフに忠実な配下の1人



メニィ・ダンジョンズ・オンラインのサーバー室にて。


オラがデータ修復をしていたら、突然、ソフ様の配下でオラとは部署が違う奴が来たっス。

……血塗られたサーベルを持って。



「ヒヒャーーハ! それはソフ様が管理していたデータかァ! 寄越せェーー!」


「ひぃっ?! 何っスか! こ、これはソフ様が甦った時に献上するデータっス!

それにまだ修復中っス!」


「問答無用だァーー! 貴様の魂ごと頂戴するゥーー! ヒッヒッフーー!」


「そんな物騒な刃物振り回している奴の言うことなんか聞かないっスー!」



ソフ様が死んだ後、何故か何人かと連絡が取れなくなったと思ったら、内部に裏切り者が居たからっスか!


冗談じゃないっス! オラは死にたくないっス!


サーバーの重要なデータを急いで回収し、オラは逃げるっス!


逃げる先は……



◇ ◇ ◇ ◇



「猫さん、廊下の真ん中で横にならないでください。

ただでさえ図体ずうたいデカイのに、邪魔です。踏みますよ」


「すやすや」


「ベッドがあるのに、どうしてそこで寝るんですか。

どいてくださいったら」


「にゃー(やめろー)」



せっかく気持ちよく寝ていたというのに、俺は無理やり座布団の上に移動させられた。

何という非道な仕打ち。座布団の上は暑いんだって。


この都市は地下に無数の温度管理用の水のパイプが流れているので、気温が一定に保たれるようになっている。

エアコンなどを使っているのは、温度管理が重要な物や人が居る、一部の建物くらいだ。


もっとも、毛玉の塊の俺にとっては若干暑い温度なのだが。



「それじゃ私はシャワー浴びますから、覗かないでくださいよ」


「にゃー(ガキの裸に興味は沸かないぞ)」



口うるさいヨツバがシャワー室へ入ったので、俺は再び廊下にゴロンと転がる。

ひんやりするぜ。


ん? 誰かワープしてこっちに来るな。

確かあいつは……



「た、助けてくださいっスー!」


「ヒーヒズヒム! 逃げても無駄ァ!」



豚の魔獣、オークっぽい見た目をしている奴。

鑑定神ソフの手下だ。


そして、それを追いかけている、サーベルを持った牛の魔獣。

こいつもソフの手下だ。


どうやら、仲間割れをしているっぽいな。



「にゃー(助けて欲しいのなら、見返りを求めるぞ)」


「何でもするっス! だからお助けをー!」



ん? 今何でもするって言ったよな?



「猫の後ろに隠れてないで、出てこいやァー! ヒッヒ、ヒヒイロカネェー!」


「にゃー(仕方ない、助けてやるか)」



ホムンクルスに任せてもいいが、たまには体を動かさないと鈍ってしまうからな。


振り下ろされた刀を、両前足の肉球で挟む。

真剣白刃取りとか言ったか、確か。



「にゃー(スキル発動。【崩壊】)」



俺の【スキルライブラリー】には、今まで手に入れた無数のスキルが入っている。

使うためにはライブラリーから取り出すか、直接スキルを指名するかが必要で、少し手間だが。


刀がポロポロと崩れていく。

刀が壊れたせいで、牛の魔獣は体制を崩し、こける。


俺は牛の魔獣の上をひょいとまたぐ。



「にゃー(妖術。【猫またぎ】)」



100年以上生きた猫の妖怪、猫又が使えるという妖術。

これはスキルではない。

人間が肺呼吸を当然のように行えるのと同じく、100年以上生きた猫族なら普通に使える術だ。


効果は、呪い。

内容は相手のカルマに準じた物が選択できる。


ふーむ、殺戮30に盗魂30か。

ちなみに殺戮には、必要に迫られて殺す分は含まれない。

また自分が直接手を下していない分も含まれない。


ハーディス様だったら1万年投獄の刑だろうなぁ。


ま、俺はそこまで鬼じゃない。



「にゃー(3年間、閉じ込めの刑だ)」



牛の魔獣君は、体がデータ化し、俺の首輪型PCの壁紙の中に閉じ込められた。


昔は屏風なんかに魔獣を閉じ込める事があったそうな。


牛の魔獣君は、壁紙の中で暴れている。

元気そうだな。どれ、壁紙を『暴君と呼ばれた魔獣達』に変更してやろう。


壁紙内には通常とは一線を画する、ドラゴンや大鬼オーガ人面樹トレントや大蛇などが居る。

それぞれの魔獣の頂点に君臨すると言われている、伝説の魔獣達だ。

そいつらが壁紙内で暴れている。


牛の魔獣君はその暴動に巻き込まれてミンチになり、復活した。

この空間内では死ぬ事すら許されない。

せいぜい、自分の罪を反省するといいだろう。


俺は廊下でゴロンと横になり、オーク君に尋ねる。



「にゃー(で、一体どうしたんだ?)」


「はぁ、実はかくかくしかじかっス……」



ほぅ、ソフの手下が、ふむ。

なるほど、裏切り、対立、うーん、俺の配下と違って統制が取れていないな。

いや、俺の配下が俺を盲信し過ぎなだけか。



「猫さん、廊下で寝るなって言いませんでしたっけ。

お客さんにお茶も出さないで、何してるんですか」


「にゃー(あーれー)」



シャワーを浴び終わったヨツバが俺を掴む。

そのまま座布団へ投げられた。


ちょっと俺の扱い酷くないか?

仕返しに彼女の腕を毛だらけにしてやったが。


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