378.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】コロコロジェット君1号


ダンジョン搭載大型移動兵器『コロコロジェット君1号』に試乗していると、木のダンジョンに居た女の子プレイヤーと目が合った気がした。

挨拶がてら微笑むと、向こうさん、飲み物を吹き出した。

驚かせてしまったかな?


おや、プレイヤーさん、窓を開けてこっちに飛んできた。

このゲーム、疲労度以外のリアルの身体能力が反映されるはずなのだが、600m以上ジャンプしてくるか。

随分と身体能力が高いんだな。



「あぁ、やっぱり猫さんですか!」



お、俺の事知っているのか。

ってか、この身体能力を有していて、俺の知り合いだという時点でコイツはヨツバで確定だな。


ふわり、とヨツバは着地した。

彼女の装備品に付与された、二段ジャンプの効果だろう。

攻略サイトに載っていた、便利効果の1つだな。



「にゃー(ネコ科言語、通じる?)」


「通じますよ、翻訳の首輪しているので。

ってか、猫さんもこのゲーム始めたんですか?」


「にゃー(ま、そんなところだ)」



コロコロジェット君を止めるために、タランチュラの糸とグリフォンの嘴、ヤマタノオロチの牙を組み合わせて制作したアンカーを地面に投げ、刺す。

同時に、車輪のジェットの燃料となる液体水素の供給を停止させるレバーを引き、ジェットを止める。



「きゃぁああああ?!」


「にゃー(24秒で止まる予定だ)」



コロコロジェット君1号はアンカーに引っ張られ減速し、しばらく進んで停止した。

伸縮性のあるアンカーなので、車輪が浮いたりすることもなかった。

うむ、なかなかの出来だ。



「にゃー(どうだ。魔獣都市マタタビで作る予定で結局ボツになった移動兵器だが、ゲーム内の素材で作ってみたぞ)」


「……色々とツッコミたい事はありますが、キリがないので止めておきます。

猫さんはこのパンジャンドラムで、人間に戦争でも仕掛けるつもりですか?」


「にゃー(パンジャンドラムって何だ)」


「えっ?」


「にゃー(えっ?)」



話を詳しく聞いたら、どうやらヨツバは、俺がイギリスの兵器を真似て作ったものだと勘違いしたらしい。

この高度な操縦技術を要する兵器が、既に開発されていたとは驚きだ。


ん? イギリスが作った兵器は制御不能?

何を馬鹿な事を言ってるんだ。

自分で作っておいて、制御不能になる訳がないだろう。


ほぅ、イギリスのそれは、ランダムに蛇行するのか。

それは猫心をくすぐるな。

小さなオモチャとして作れば、売れるんじゃないか?


え? 構造に無駄が多い?

そうかなぁ。シンプルで良いものだと思うがなぁ。

魔獣幹部達にはダメ出しを食らいまくったが。



「にゃー(彼らを回収するために、ダンジョンを移動させる手段を考えたら自然とこうなった)」


「自然とは一体……彼ら?」


「にゃー(今から、パズズという商人の居る町へ向かうつもりなんだ。

その町で、現実世界へ作り変えて欲しいという連中をダンジョンへと回収する。

その後は他の町へ向かい、同様に人を回収する)」


「現実世界へ作り変える、とは?」


「にゃー(この世界、現実世界であと10日で消滅するだろ?

βテストが終了するから)」


「なん、だと……」



ヨツバは何故か地面にうなだれてしまった。



「私の天国が、あと10日、そ、そんなぁ……」



天国って何だ?

そういうタイプのダンジョンが有るのか?

攻略wi○iには載ってなかったが。


まあいいや。



「にゃー(付いてくるのなら、一緒に連れて行くが?)」


「いえ、結構です。私は最後のひと時まで天国で居ることにします……」



ヨツバはトボトボと歩き、地面にジャンプし降り立つ。

そして自分のダンジョンへと帰ってしまった。


何がそんなにショックだったのか知らないが、俺の知る事じゃない。

明日、何か美味い物でも食べさせてやるとしよう。


俺は地面に降り、アンカーを回収してからコロコロジェット君へ再び乗る。


そして燃料供給レバーを倒し、車輪のジェットを駆動させる。

そのまま、パズズの居た町へと向かった。



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