301.【後日談】別行動:リオン君、ブラディパンサー、ネル、ヨツバ、スペンサー君の場合
・リオン視点
ここは雑貨屋の敷地内にある鍛冶場前だ。
どうやら俺は、アルコール中毒とかいう酒の病気で死んだらしい。
それは62歳の話だそうだが、俺は今18歳。
何でこの年齢なんだろうと思ったが、かつての俺が、ああ18の頃に戻りてぇ、と口癖のように言っていたからだそうだ。
俺の傍(そば)で、ガリガリガリガリと雑貨屋の木の壁で爪とぎしているのは、赤い豹(ひょう)の魔獣。
相棒のブラディパンサーだ。
「グルルルゥゥッ!(わーい! とっても楽しいのー!)」
ガリガリガリ、ボコッ!
ブラディパンサーの爪とぎによって、壁に大穴が開いてしまう。
「……」
壁の穴の向こうから、猫の旦那が何とも言えない表情でこちらを見ていた。
「ガウ!(旦那さんが見えたのー)」
「にゃー(壁で爪とぎするのは禁止だ)」
「グルゥ……(えー……)」
何故かブラディパンサーが落ち込み、猫の旦那がにゃごにゃご唱えると、たちまち壁が元通りになる。
「さ、今から火おこしするから、手伝ってくれ」
「グルッ、グルルッ(ふいご踏み踏みなのー)」
鍛冶場に入り、燃料を投入。
俺は火おこしをして燃料に火を点け、ブラディパンサーはふいごで風を送る。
「げほっ、ホコリが舞っている。よく見ると、長いこと掃除してねーな、これは」
ふいごをいったん止めてもらい、先にほうきで回りを掃くことにした。
◇ ◇ ◇ ◇
・ヨツバ視点
ここは宿屋の管理人室。
猫さんに私が送ったという手紙を、いったん全部返してもらった。
それをネルちゃん、スペンサー君と一緒に広げて見てみる。
「ヨツバ、これは何してるのー?」
「記憶の補完、ですね」
猫さんいわく、私たちは蘇生時の年齢以降の記憶が飛んでいるそうだ。
スキルや持ち物までも、当時のままだとか。
飛んだ記憶を少しでも取り戻すために、こうして手紙を漁っているというわけ。
何か役に立つことが少しでも書いてあるといいんだけど。
ネルちゃんが手紙の1つを見て、顔を輝かせた。
「あー! スペンサーとヨツバが結婚したって書いてあるー!」
「「ぶーっ!」」
おお、未来の私よ、イケメン奴隷ハーレムを諦めたのか?!
情けない!
というか、スペンサー君が落ち込んでいるんだけど。
「何ということだ……吾輩は、10歳以上年下の幼女に手を出したということか……」
「知ってるー、こういうの、『ろりこん』って言うんでしょ!
勇者の昔話に書いてあったよ!」
「いや、この時の私は25歳ですからね? 合法ですよ?」
ロリコン疑惑をかけられているスペンサー君をなだめつつ、私たちは残りの手紙を調べることにした。
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