232.必殺、猫キック


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魔石の加工は、熟練の魔法使いでなければならない。

なぜなら、魔石の中の力が暴走し、爆発するからである。

大魔導士ミュー著『魔石で成り上がる!~大魔導士様の魔石加工工房~』

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森の自宅にて。

俺は、最近出来た本屋から買った本を読んでいた。


5万Gもする植物紙の本だ。

だが、スペンサー君によれば、羊皮紙だと600万G以上に相当する品らしい。


いずれは図書館内に高価な本を増やしたい。

だが本屋の主人によれば、そういった本は貴族の秘伝の書であることが多く、あまり出回らないのだとか。


バロム子爵や王様にも本を書き写してみても良いか聞いてみたが、あまり良い返事はもらえなかった。


うーむ、資金は潤沢にあるから、いっそ著者を囲うか?

いや、それより著者の養成をするべきか?


ぺらり。


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なお、魔王が魔石に魔力を送ると、魔獣が現れる。

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ほー。

魔王ってそんなこと出来るんだ。


よーし、実験してみよう。

俺はキラーボアの魔石を取り出す。


そして魔力注入とやらをやってみる。

おおきくなーれ。


魔石は黒い煙をまとい、ブルブル震えだした。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

地面が揺れる。


そして魔石が割れ、二本足で立つ巨大な牛が現れた。



「ンモー!(くくく! 冥界に封じられて百年!

再びこの世界を血で染める時が来た!

我はオーガロード! 最強のオーガにして魔王!)」


「にゃー(こんにちは)」


「モゥ!(ははは! 肉つきの良い猫よ!

我の最初の食事となれることを誇りに思うが良い!

死ねぇ!)」



駄目だこれ。

会話にならないタイプの人だ。

人じゃなくて魔獣か。


オーガロードさんの振り下ろすこん棒を避けて、顔に抱きつく。



「モオオオオ?!(何だ?!)」



食らえー、必殺、猫キック。


げしげしげしげし。



「モゥ?!(ぶはぁっ?!)」



オーガロードさんの顔はボコボコになった。


ドスン!

オーガロードさんが倒れる。


同時に、色んな所から矢が放たれる。

エルフの皆さんの攻撃だ。


的確にオーガロードの急所を貫き、彼は絶命してしまった。

ここまでするつもりはなかったのだが。



「バステト様! いったい何事ですのじゃ?!」


「見た事のない巨大オーガです~。

どこから侵入したのでしょうか~?」



俺が召喚しましたテヘペロ。

言えない、そんなこと。


知らないフリして、俺は本の続きを読む。


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どうやら冥界の魂を無理やり魔石に封じ込めて魔獣化しているようである。

魂を粗末に扱うため、当然神や冥王は怒るであろう。

魔王が神々に嫌われる理由の1つがこれである。

――――――――――――――――――――――――


おっと、神様的に駄目な行動だったか。

後でハーディス像に謝っておこう。


ハーディス像にお供え物をしたら、ハーディス様の神スペースに誘われて、めっ、と言われた。

いい年した女性が何やってんだか。


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