212.お弁当


深夜。ここは森の中。

ヨツバがスペンサー君の様子を見に来た。


スペンサー君は、即席テントの中で眠っている。

それを見たヨツバは、テントを出て、俺に尋ねる。



「猫さん、治療はどうでしたか?」


『アレルギーは治した』と板に書く。


「それは良かったです。ところで治療費は」


『いらん』と書く。


「そうですか?

では明日、役場でスペンサー君を店員として登録するのを、お任せしても良いでしょうか。

私は宿を離れられないので」



そういえば、コーディとシャムの登録もしないといけないなぁ。


俺は登録作業を引き受けた。


ちなみに、スペンサー君は明日からは、ネルの宿屋で泊まらせることにしたらしい。

宿代はヨツバが払うそうだ。

スペンサー君には既にお金を渡しているとのこと。


ヨツバと分かれた後、俺は寝ることにした。

今日は広いベッドで寝るとしよう。

おやすみなさい。



◇ ◇ ◇ ◇



翌日。町にて。

役場にて登録作業を行った後、猫の集会所へ向かう。



「にゃー(おはよう)」


「にゃ(猫又様、おはようございます)」



幹部格の猫と数匹以外は、どこかに行っているのだろう、ここには居なかった。



「にゃお(皆なら、食事を人間に分けてもらいに行きましたよ)」


「にゃー(そうか)」



俺は、今朝死亡したグレートホッパーを焼いた物を取り出す。

森で食べても良かったのだが、ちょっとしたお弁当気分で持ってきたのだ。


さっそく食べる。

もぐもぐ。


こ、これは……!



「にゃー!(美味い! プリプリの肉に、サクサクの香ばしい外殻!

そして口の中に広がる濃厚な味わいが……)」


「みゃー(わーい!)」



あっ?!

俺の食べかけを、子ども猫が盗った!



「みゃん(ウンまああ~いっ!)」


「にゃー!(俺のグレイトホッパーがー!)」



酷い! 少しずつ食べて楽しむつもりだったのに!



「みゃーむ(猫又様ありがとー!)」



むむ、無邪気な子ども猫に怒るのも大人げないな。

代わりにモフらせてもらうとしよう。


もふもふ。



「みゃー(くすぐったいよぅ)」



気の済むまでモフった後、俺はリオン君が居る露店場所に向かうことにした。

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