199.脱獄
城の地下の牢の前でリョウマ君と向かい合う。
1ヶ月の間に、リョウマ君は自分が帝国ルカタに何をされたのか思い出したようだ。
「怖いな、人間って。自分の利益のためなら何でもするんだな」
リョウマ君は、自分が暗殺者に殺されるところだったとも言っている。
あの猫タッチした暗殺者は、帝国の差し金だったらしい。
仕向けた本人達を俺が連れて来て、彼らが勝手に吐いたそうだ。
「俺はこのまま一生、牢屋の中で暮らすことになっているらしい。
ルカタ帝国に戻れば再び帝国が力を付けるから、それは許さないってことなんだろう」
『牢から出たいか?』と打つ。
「出たところで、俺にはもう【スキル強奪】は残っていないしな。
俺に返すつもりは無いんだろう?」
そりゃそうだ。
あんな犯罪スキル、使わない方が良い。
頷くと、やっぱりな、と返される。
『その代わり、返還しきれなかったスキルを全部与える』と打つ。
「ん? いいのか?」
『スキルを奪った魔獣の分まで生きるんだ。
これはお前の責任だ。
そのスキルが誰かの役に立てたなら、彼らも喜ぶだろうよ』と打つ。
俺が持っていても宝の持ち腐れ、猫に小判だからな。
◇ ◇ ◇ ◇
・フランベル国王視点
「陛下! 勇者リョウマが脱走しました!」
「警備はどうなっている?」
「それが、何の音も立てず、それどころか爪痕一つ残さず居なくなった模様です!」
やはりな。
魔王が気にかけていたから、いずれこうなるとは思っていた。
後日、雑貨屋へ訪問し、それとなく聞いてみたが、『俺が城の警備のことなんて知るわけないだろう。
冷やかしなら帰れ』と返された。
◇ ◇ ◇ ◇
・ある冒険者視点
「【ファイア】!」
目の前の、顔の付いた植物魔獣を炎で葬る。
「さすがブレイズ! この調子で稼ごうぜ!」
「ああ!」
数ヶ月前、知らない国へと連れて来られた。
国名はクレイだったか。
ドワーフが多い国だが、人間もそこそこ居て、皆が酒好きという陽気な国だ。
以前の名前リョウマを捨てブレイズを名乗り、冒険者ギルドへ登録。
現在ようやくDランクへと上り詰めた。
フランベル国の魔王の猫は元気にしているだろうか。
便りを書きたいが、足がつく可能性があるので自重している。
「ブレイズ! この仕事が終わったら飲みに行こうぜ!」
「お前いっつもそればっかりだな」
相棒のドワーフのセリフに苦笑し、俺は石に座って剣の汚れをふき取ることにした。
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