187.帝国ルカタ


・帝国ルカタにて


「つまり、フランベル国に居るという大魔導士は、魔王トミタということですね?」


「そのとおりでおじゃる。

感染症騒動を解決し、自分の信者を作り上げ、さらに他国にコネを作ったでおじゃる。

なかなか、したたかな者でおじゃる」



誰がどう見ても自作自演マッチポンプじゃないか。

結核菌も、おそらく魔王が自分でばら撒いたに違いない。

その証拠に、フランベル国だけはほとんど結核の被害が無いらしいからだ。


魔王がこのまま生き続けていれば、世界中の人がいつ来るやも知れぬ恐怖におびえることになるだろう。



「私に任せてください、皇帝。

この勇者リョウマ、必ずや魔王の首、討ち取って参ります」


「頼んだでおじゃる」



勇者である俺が、魔王を倒す必要がある。


伝承では、勇者が魔王を倒すことで、魔王は1000年間不在となるそうだ。

さらに、魔王の強さに応じて世界中に恵みがもたらされる、という特典もあると聞く。


魔王には、俺が成り上がるための踏み台になってもらおう。


俺は冒険者の仲間を連れ、魔王の居るフランベル王国へ向かうことにした。



◇ ◇ ◇ ◇



・帝国ルカタ皇帝視点



「行ったでおじゃるな」


「はい、ワルサー皇帝様」



勇者とは、力を神から授かった子どもでおじゃる。

勇者召喚に成功したのは彼1人だけだった。

が、彼のスキルはすさまじく、あっという間に帝国の主戦力となったでおじゃる。


もちろん、女と酒と麻薬で彼から考える力を奪い、帝国に都合の良いように洗脳済みでおじゃる。



「わが帝国の勇者リョウマがもし魔王に殺されたなら、復讐という名目でフランベル国へ戦争をしかける。

逆に魔王を討伐したとなれば、他国へ帝国の威光を示す丁度良い宣伝となる」


「兵が約1万、いつでも出発可能です」


「明日出発させよ。勇者に悟られぬようにな。

ところで、そちはどう思う?

勇者は魔王を討伐出来ると考えるか?」


「あのスキルさえ使ってくれたら、少なくとも大幅な弱体化が見込めるかと」


「そうでおじゃるな。

その後は、帝国の精鋭を魔王にてるでおじゃる。

帝国ルカタに栄光あれ」


「「「帝国ルカタに栄光あれ!」」」



部下たちと酒を交わし、吉報を待つでおじゃる。


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