149.猫毛フェルト


ここは昼の宿屋。


マック君は錬金術に使う物を買うために外出中。

ヨツバとナンシーさんは昼寝中。

ネルが受付テーブルに座っている。


客が来たらナンシーさんを起こすのだが、今のところ客は来ない。


俺はネルに、フェルト針による猫毛フェルトを教えていた。

なお、毛の提供者は俺と、猫の集会所に集まっている皆さまである。

俺が櫛を使って、いくらか頂戴したのだ。

軽くお湯で洗い【加速錬成】で乾かし、念のため【解毒】まで行ったからキレイなはずだ。


毛を置き、錬金術で作った、先っぽがギザギザした針でくるりと巻いた後、プスプス刺す。

刺す作業を繰り返し、丸い毛玉を作る。


毛玉を組み合わせ、プスリプスリと針を刺し、合体させる。

黒毛で表情を作って、っと。



「わー! 猫さんだー!」


「にゃー(ドヤァ)」



フェルト製の猫マスコットが完成だ。

我ながら可愛く出来たと思う。



「これ、宿に飾って良い?」


「にゃー(良いぞ)」



俺が頷く。ネルは嬉しそうにマスコットを飾る。



「何だか楽しいね!」



喜んでもらえたようで何よりだ。


フェルト人形でも作れば売れるんじゃないかと思ってネルに教えていたのだが、別に売らなくてもいいよな。

作るだけでも楽しいし。


しばらくしたらマック君が帰って来て、何やってるのか聞かれたので、猫マスコットを見せた。


するとマック君も作りたいと言ってきたので、教えてやることにした。



「にゃー(出来たぜ)」


「猫さん、何それー?」


「新手の魔獣かい?」



タコを作ったのだが、どうやら二人とも分からなかったらしい。

赤い毛がなかったので茶色を使ったから、認識されなかったのだろうか。

いや、俺が下手すぎただけか。


と思ったが、単純にタコ自体を知らなかっただけのようであった。

ネルに至っては、海を見たことが無いらしい。

そういえば、この世界に限れば、俺も見たことが無いな。


この後ナンシーさんとヨツバも起きて、ナンシーさんまで参加しだした。

ヨツバはタコを見て、たこ焼きが食べたいですねと言っている。

俺も食いたい。たこ焼きに冷えたビール。


ナンシーさんが夢中でフェルト作業をしていると、ネルがお客さんの夕食を作り始めた。

慌ててナンシーさんも作業を中断し、厨房へ行きネルと一緒に料理を作る。


今日の夕飯は野菜スープとキラーボアのステーキだった。

ヨツバは、離乳食を早く卒業したいとぼやいていた。



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