139.献上品を運ぶ
・バロム子爵視点
「バロム様、砂糖10塊と、昨日捕えたエルフの奴隷、馬車に詰め込み完了しました」
「はい、ごくろうさまです。
どちらも王様への献上品なので、丁寧に扱ってください」
私は勇者の末裔、ロイア・ド・バロム。
それなりに歴史を持つ子爵でもあります。
かつての勇者が残した砂糖事業を、先祖代々に渡ってコツコツと行い、利益を上げています。
もちろん先祖と当時の国王の取り決めに従い、公共事業と孤児院への寄付なども行っているのです。
初代は5割ほど納めていたみたいですが、私の代ではほんの利益の1割足らずに押さえています。
この国は馬鹿です。
私がどれだけ大量に稼いでいるか知らずに、はした金を寄付しただけで、私を聖人だの名君だのと褒めたたえます。
おかげで国においての発言権も増し、砂糖においては私の独占状態。
国に砂糖の輸入を禁止させているおかげで、私の言い値で、好きな量を市場に流すことが出来るのです。
砂糖のおかげで私は、文字通り甘い蜜を吸うことが出来ています。
それは未来永劫、私の子孫のそのまた子孫まで続くことでしょう。
大魔導士などと言われているデブ猫が砂糖の栽培権を欲していたが、ふざけたことを言うものです。
砂糖は私のもの。
この利益は私以外にはふさわしくないです。
事実、私は砂糖栽培権を他の誰にも許可していません。
それに、この砂糖栽培を制限する法律、副産物としてエルフの奴隷を合法的なものとしているのです。
国は堂々とエルフを捕え、国民も違法者のエルフを奴隷とすることに何のためらいもない。
素晴らしい法律です。
砂糖栽培を勝手に行って私の利益の邪魔をするエルフという種族は、全員奴隷になってしかるべき。
皆殺しにしろとは言いません、私は慈悲深いですので。
手に入れたエルフ奴隷は、私の手足として働かせるのです。
現に領土の砂糖栽培はエルフ奴隷を大量に雇用しています。
彼らはタダで働いてくれるのです。
食べ物は勝手に彼らで何か適当に栽培して食べるので、放っておいても問題はありません。
そして、集めた金で様々な事業を試してみますが、失敗続き。
私には自分で事業を立ち上げる才能が無いみたいです。
多くの金を溶かしてしまいました。
ですが最近ようやく、エルフ奴隷を用いた植物紙事業がなんとか黒字になりました。
ああ、もっと金の成る事業はありませんか?
「えーん! えーん!」
「大丈夫、アウレネ姉ちゃんが助けてくれるから……」
「バステト様ばんざーい! 肉球サイコー!」
奴隷が騒がしいですが、いつものことなので問題ありません。
数日もすれば、そのうち静かになるでしょう。
私は献上品を載せた馬車とは別に用意させた馬車に乗り込み、御者達に命令します。
「出発してください」
領地を離れ、王都の町まで向かいます。
次に帰ってくる頃には、きっと新しい金のなる木を見つけましょう。
そして、バロム子爵領はさらに発展するのです。
そういえば、王様は急に献上品を持って参上せよ、と我々貴族へ通達しました。
古竜フランベルジュが復活したから、フランベルジュに対する貢物にするのだとか。
王様は激務で頭がおかしくなってしまったのでしょうか?
王様の命令には我々は逆らえませんが、もし嘘だったなら王様は確実に王座から降ろされるでしょう。
今のうちに、次に王様になりそうな可能性のある人に、
ま、王都に行けば分かることです。
王様の言が真実か嘘かどうかが。
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