110.(?)自己満足



魔王ゴルンを倒せば、その仲間の魔獣は心が折れて撤退するだろうと思っていた。


だが、彼らは1体も逃げ出さず、戦ってきた。


途中でアウレネの矢が尽きたので、【四次元空間】から取り出し補充してやった。


シルフ婆さんはMPが少なくなったと言い、自宅へと戻った。


そしてフランベルジュだが、あの石像の体がパリパリと崩れ、中から真っ赤な大きいトカゲの魔獣が現れた。



「キュオオオオオオン!(ようやく体を取り戻したのである!

まだ本調子ではないが、これで聖竜と認められるのである!)」



トカゲになった後のフランベルジュは凄かった。

腕の一振りで暴風が起こり、しっぽを振れば木がへし折られ、咆哮を放つと大地が振動した。


あれで本調子でないと言っているのだから、調子が戻った時はどれほどなのだろうか。


やがて、魔王ゴルンが連れてきた魔獣が全滅した。



◇ ◇ ◇ ◇



俺は大量の死体を【四次元空間】で回収する。



「にゃー(こんなはずじゃなかったのにな……)」


「キュオオオン!(何を落ち込んでいるのである、不思議猫よ)」


「にゃー(俺がもっと上手く立ちまわれば、こんな大惨事にならなかっただろうに)」


「キュオン!(なぁに、こいつらはただの自業自得である。

我の肉体の復活の礎となった。それだけでも誇れるのである。

無駄ではなかったのである)」



アウレネに人間を殺すなと言い、勇者少年にエルフの偏見を無くすよう説教した。

その俺がこのざまである。


アウレネは「祝杯をあげますよ~!」と言いつつ、オークの肉を大量に調理していた。

エルフ達もその手伝いをしている。

皆嬉しそうだ。集落を襲った連中と、その仲間がやられたんだから、当然か。


だが俺は、何となく参加する気になれず、ウッドハウスに籠って寝転がるのだった。



◇ ◇ ◇ ◇



翌日、俺は大きな岩を爪で削り、形を整えていた。



「にゃんこさん、何してるんです~?」



アウレネを無視し、作業を続ける。



「また石像を作ってるんですか~?」



そう。俺は魔王ゴルンに似せた石像を作っていた。



「キュオオオオン(不思議猫よ、ゴルンは死んだのである。

我とは違い、そんな物作っても動かないのである。無意味である)」


「にゃー(ただの自己満足だ)」



朝から作業し夕方になり、巨大な石像が完成する。


フランベルジュが居た元墓場に、回収した死体を積んでマグマで火を付けて焼き払う。


焼き払った場所の上に石で作った台座を置き、そこに石像を設置だ。


そして、台座に文字を刻んだ。


『魔王ゴルンとその忠臣たち、ここに眠る』


少し考え、文字を付け足す。


『この石像を害する者には罰を下す。注意されたし。森の主より』


こうやって書いておけば、エルフ達に壊される心配も減るだろう。


俺は石像を後にした。

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