97.町で買い物



パン屋にたどり着く。

小麦の良い香りがする。

ネルとマック君は店に入ろうとするが、俺は店の前で待機だ。



「いつも思うけど、猫さん中に入らないの?」



ネルに誘われるが、さすがに食料を扱っている店に、動物が入るのは駄目だろう。

『黒パン20本買ってくれ』と書く。



「はーい」



ネル達は店に入る。


俺は店の前でのんびりしていると、赤髪少女のシャムがやってきた。

ここのパン屋の娘だ。多分13歳くらい。



「あら、そんな所で何してるの、猫さん」


「にゃー(買い物待ち)」


「へぇ。ネルちゃんたちと買い物しに来たのねぇ」



……ん? 今、言葉が通じたような?



「にゃー(ひょっとして、俺の言うことが分かるのか?)」


「え? 餌が欲しい? ちょっと待ってね」



気のせいだったようだ。シャムは俺に干し肉をくれた。

いや、いらないから。


俺は首を横に振る。



「違う? 遊んで欲しいって?

ほら、ここに草があるから、遊んであげるわぁ」



その辺の草を引っこ抜き、俺の目の前でぷらぷらさせてくる。

仕方ない、遊んでやるか。


俺はネル達の買い物が終わるまで、適当にシャムの相手をしてやった。



◇ ◇ ◇ ◇



パン屋の買い物が済んだから、市場に向かった。

ここでは、色んな農家や猟師などが、自慢の商品を並べている。


俺は市場で小麦、塩を買ってもらった。


残念ながら、目当ての卵は売り切れていた。

アウレネ達に唐揚げ作ってやろうと思っていたけど、卵なしじゃ無理か。


砂糖も欲しかったのだが、目が飛び出るくらい高価だったから買ってもらわなかった。

相変わらずの値段だった。一袋で宿で1年くらい暮らせるくらいの額だぞ。

いっそ錬金術で作ってみるか?


宿屋のマック君の部屋に着いた俺は【四次元空間】で大量に木片を取り出す。

【分離錬成】でセルロースを抽出する。

他の物は【四次元空間】に仕舞う。


セルロースはブドウ糖がβ-1,4結合したものだ。

木片に【四次元空間】によって水をぶっかける。

そして【変性錬成】で加水分解。ブドウ糖にする。


最後に【加速錬成】で乾燥させる。

これでブドウ糖が大量入手出来た。


あとは果糖と結合させれば砂糖の完成だ。



「猫さん、この粉は何だい?!」


「あまーい! あまいよ、これ!」



砂糖より甘くないはずだし、まだ完成じゃないのだが……まあいいか。

俺はブドウ糖をネルとマック君にも分けてやることにした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る