42.ネル帰る


ネルはパンと干し肉を持っていたみたいで、俺にどうぞと渡してくれた。

が、塩気が多いから食えないと書くとしょんぼりした。


代わりにネルの夕食を作ってやることにした。


いつも通り、かまどで火を焚く。


アウレネが行う場合、弓の弦に木の棒を巻いて、のこぎりみたく弓を動かし木の棒を回転させて火おこしをするのだが、俺は面倒だから溶岩を垂らして着火する。


壺に水を張り、食用の野草と、干し肉、ついでにイノシシもどきの肉を加える。


それをコトコト煮込む。

ついでにイノシシもどきの串焼きを焼く。


スープを木製の深皿に入れてやる。

木製スプーンを即興で作ってやり、ネルに渡す。



「おいしそうだね!」


「私の採った木の実もどうですか~?」


「いらない!」


「が~ん!」



アウレネの渡した木の実もきちんと食用なのだが、彼女はネルから信用されてないらしい。

一応ネルの命の恩人なのだが。



「にゃんこさん、慰めてください~」



ええい、うっとうしい。

俺に近付くな。


俺が猫パンチの左ジャブでアウレネを追い払っているのを、ネルが笑って見ている。


そんな穏やかな時間が、夜まで続いた。



◇ ◇ ◇ ◇



ネルを俺の家で寝かせ、次の日の朝。


食事を済ませた後、俺とアウレネはネルを町へ送ることにした。


俺一人でも大丈夫なのだが、アウレネとしてはネルのことを放っておけないらしい。

それにネルをおぶって行くと言うので、それならと付いてきてもらうことにした。


人間を憎んでいるんじゃなかったのか? と聞くと、子どもに罪は無いらしい。

彼女の判断基準はよく分からん。


数時間で町へ付く。さすがに町からはアウレネと別行動だ。


俺はネルを宿屋まで連れて行く。

宿屋に入ると、受付をしていたナンシーさんが飛んできた。



「ネル! いったいどこに行っていたの?!」


「ママ! ただいま痛っ?!」



ナンシーさんはネルの頭を殴った。


おいおい、児童虐待だぞ。

硬膜下血腫や硬膜外血腫、脳挫傷が起こったらどうするつもりだ?

障害が残るぞ?



「たくさんの人に迷惑をかけて! 今から一緒に謝りに行くわよ!」



ネルにこっそりヒールをかけてやる。

これで大丈夫だといいのだが。



「あら、生きてたの、猫さん」



ナンシーさん怖ぇ。

あの優しそうな雰囲気は猫を被っていただけのようだ。


ネルはナンシーさんに連れられてどっか行くみたいだ。

おそらく、ネルを捜索していた方々に謝りに行くのだろう。


ネルがちらりとこちらを向いたので、あらかじめ用意していた板を見せる。


それには『3日に1度、会ってやるよ』と書かれている。


ネルは笑顔になった。

やはり子どもは笑っているのが一番だ。


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