35.錬金術師再来
アウレネは『植林をしに行きます~』と、西へ向かった。
俺はかまどで火を焚きながら昼寝だ。
最近は働き過ぎだったからな、たまにはゆっくりしてもいいだろう。
おやすみなさい。
◇ ◇ ◇ ◇
ザッザッザッザ……。
足音が聞こえたので、目が覚めてしまった。
アウレネはこんな大きな足音は立てない。
恐らく人間の誰かだろう。
「ここで間違いないのかよ?」
「はい! ウッドハウスがもうすぐ見えるはずなのですが……石壁?」
「……掘りもある」
「ねぇ、壁の向こうに大きな木があるわ。ウッドハウスって、あれじゃない?」
「そうです! あれに違いありません!」
声の聞こえた方向の壁に登ってみる。
おや、この前助けた少年少女3人組と、マック君じゃないか。
マック君は茶色のかつらを被っているが、何かあったのだろうか?
「ああっ! 猫さん! あの時はお世話になりました!」
「ニコ、何で猫に礼なんてしてるんだ?」
「うわ、太い猫ね~」
「……? どこかで見たような……?」
マック君は俺のことを覚えているようだが、3人組は俺を覚えていないらしい。
城で1度会っただけだし、助けた時も意識を失っていたからか。
「ではボクを護送するのはここまでで良いです!
『終わりの印を書き記せ。フィーネ』」
「お、ギルドカードにクエスト完了って書いてあるな。
これをギルドへ持って行けば報酬が貰えるわけだ」
「にしてもクエストで稼ぐのって面倒ねぇ。
城で食っちゃ寝してた方が楽じゃないの?」
「馬鹿か! 冒険者にならないと、ずっと国に寄生することになるだろ!
俺はいつまでもこんな国になんて留まらないぞ。
出ていって、魔王を倒して、ハーレムを築いてやる」
「……誰が聞いているか分からない。
その発言は不用意……」
「ハッ! 止められるなら止めて見ろってんだ。
城の連中も、魔獣も、話にならないほど弱ぇ。
あのエルフが規格外過ぎたんだ」
言いつつ3人組は町の方角へと行ってしまった。
彼らはマック君をここまで送り届けたらしい。
「うーん、ボクが言うのも何だけど、勇者って変わってるなぁ」
『勇者?』と俺は木の板に書く。
「そうだよ。彼らはこのフランベル王国で召喚された勇者らしいよ」
マック君は、勇者とは何かを教えてくれた。
彼らは神より遣わされた異世界からの使徒であり、魔王を滅ぼすために召喚されるという。
国1つにつき、100年に1度の勇者召喚によって、最大4人まで勇者を召喚することが出来て、勇者はミノタウルス並の力を有しているため、貴重な戦力となるのだとか。
「ま、そんなことはどうでもいいから置いといて」
マック君が目を輝かせる。
「その筆は新手のペンかい?! ボクに見せて欲しい!」
俺のなんちゃって鉛筆を、そんな目で見られても困るんだが。
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