26.ネルの教育方針を考える


俺は町に来たついでに猫の集会に顔を出す。


もう夕方なので帰った猫も多いが、長老っぽい猫はまだいたらしい。



「にゃー(猫又様! いらっしゃったのですね!)」


「にゃん(俺は猫又じゃねぇ)」


「にゃお(またまた、ご謙遜を)」



猫の社会にも謙遜なんてあるのか?


まあいいや。



「にゃ(お前らバジリスクの肉って興味ある?)」


「にゃー(バジ……? 何の肉です?)」


「にゃー(大きい蛇の肉)」


「にゃー(蛇ですか。長いこと食べてませんね)」



俺は残ったバジリスクの肉を全部、集会所の猫たちにあげることにした。


同じ肉ばっかり食って、飽きてたところだったのだ。

捨てるのももったいないし、差し入れ代わりにしようと思う。



「にゃー(ほれ。仲良く分けて食えよ)」


「にゃ!(こ、これは……! なんて上等な肉なのでしょう!)」



集会所の猫たちが聞きつけたみたいで、にゃーにゃー言いながら寄ってきた。


さて、あとは宿屋の少女ネルにも会いに行ってやるか。


肉を取り合う野良猫をよそに、俺は宿へ向かった。



◇ ◇ ◇ ◇



宿をノックすると、少女ネルが現れる。



「猫さん、いらっしゃーい!」



俺は宿へ入る。



「ごめんね猫さん。もう夕食の時間終わったの」


「にゃー(気にすんな)」



俺は宿の廊下にいたネズミを捕まえパクリ。


血はこぼしてないぞ、褒めてくれ。


ネズミの肉はなんというか、生ごみくさい味がする。

あまり美味くない。



「猫さんすごーい」


「ただいまー、あら、猫さんまた来たのね」



宿の女主人のナンシーさんが帰ってきたらしい。

このままだと娘が猫離れできなくなっちゃうかも、と小声で呟いている。


むむ、俺が頻繁に来ることはネルの教育に良くないのかもしれないな。

来る頻度を減らすか。


そのうち同世代の子と遊べる年になるだろう。

そうなれば寂しくもないはずだ。


俺はネルの読書に付き合いながら、そんな事を考えていた。

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