15.猫又様!


翌日、俺が森の手作りテントの所へ帰ると、そこには人だかりが出来ていた。



「おい、この皮、バジリスクのものに間違いない」


「脱皮した皮を使ったのか?」


「見ろ! テントの中にバジリスクの頭があるぞ!」



俺のテントが珍しいようだ。


邪魔だから帰ってくれないかなぁ。



「にゃー(俺の家から出ていけ)」


「ん? 何だ猫か」



駄目だ。言葉が通じない。


俺の書ける言葉のレパートリーはまだ少ないから、今のところ意志疎通は無理だ。


仕方ない、そのうち帰ってくれるだろう。


俺は町に出かけることにした。



◇ ◇ ◇ ◇



町に入ると、黒い猫が俺に近付いてきた。

可愛い。飼いたい。



「ぐにゃー(おい、そこの新入り)」


「にゃー(ん? 俺のこと?)」


「にゃん(そうだ)」



野良猫は今までも見かけはしたが、俺を見るなり逃げていたので、こうして面と向かって話をするのは初めてだ。



「にゃ(この町の猫ならば、東広場の集会に出ることは常識だぞ。

毎日とは言わないがたまには顔を出せ。

場所が分からないなら俺が今から連れていってやる)」


「にゃー(猫の集会!)」



たくさんの猫が居るってことか!

これは行くしかあるまい。



◇ ◇ ◇ ◇



ここは町の東端にある広場。

そこには猫が10匹以上居る。



「にゃ(ワシがここら一帯のボスじゃ、新入りよ)」


「にゃー(よろしく)」


年寄り猫に挨拶されながら周りを見る。

全員まったりくつろいでいる。


たまに町の人が通りがけにもふもふして、餌をやっている。


餌を食べるのは、序列が高い順となっている。



「にゃ(おい新入り、食うがいい)」


「にゃー(自分で食う分は持ってるから、要らない)」


「にゃ?(持っている? どこに?)」



俺は四次元空間からバジリスクの肉を出して見せる。



「にゃ?!(魔法?!)」


「にゃ!(この新入り、魔法を使ったぞ!)」


「にゃ(聞いたことがある……20歳以上生きた猫は猫又となり、妖術を使うことが出来るようになると)」


「にゃ!(もしや、猫又様では……)」



周りが騒がしいが、気にせずバジリスクの肉をほおばる。

うーん、このさっぱりとした味がたまらん。



「にゃ(どうやらワシよりもボスにふさわしいお方が現れたようだ)」


「にゃん!(猫又様!)」


「にゃん!(猫又様!)」


「にゃん!(猫又様!)」



猫達はお腹を見せる。服従のポーズ?


せっかくだからモフらせてもらおう。


もふもふもふ。



「ギャー!(やめんかい!)」



怒られてしまった。


その後集会は解散となり、俺は森のテントの所へ戻った。


テントに使っていた皮と、置いてあったバジリスクの頭は盗まれていた。

酷いや。

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